
先日の論評にも値しないような世界タイトルマッチを別としても、すごい!と思うボクシングの試合に、ここ15年近く出会っていません。
90年代以降、最も衰退したスポーツはボクシングではないでしょうか。
ぼくがいっても詮方ないことですが、世界王者を決める団体を統一し、インフレ気味のランクをフライ、バンタム、フェザー、ライト、ウェルター、ミドル、ジュニアヘビー、ヘビーぐらいに再編し、価値を高めてもらいたいです。個人的に親父とは仲が悪かったのですが、ボクシングだけは一緒にみていた、というのも今となっては大切な思い出です。そんな試合の中には、いまでも、その話だけで酒が飲めちゃうような素晴らしい試合がありました。オリバレスvs金沢戦なんか残念ながら、DVD化されていなかったんですが、なんと、youtubeで見られるんですね。
個人的なベスト3バウトは以下の通りです。
SS+ ルーベン・オリバレスvs.金沢和良 世界バンタム級 1971
当時はまだWBCやIBFなどの団体はなく、世界バンタム級チャンピオンはただ一人。王者に君臨していたのはそれまで65勝61KOという怪物オリバレスのみ。13回の猛ラッシュで精力、気力とも使い果たした東洋チャンピオン金沢は14回、2度までもマットに沈められます。2度目の時は、さすがにこれで終わったと思ったのですが、なんと、気力を振り絞って立ち上がり、無敵のオリバムスに対して「てめぇ、ぶっ殺してやる」と叫びながら立ち向かっていったのです(ちなみに、テレビではなにか叫んでいるな、という程度しかわかりませんでしたが)。金沢の気迫と、最後の力を振り絞ったスイングはオリバレスをおびえさせますが、ついに3度目のダウンを喫し、TKO負け。
オリバレスvs金沢の試合は1971年の年間最高試合に選ばれたんですが、いまもって日本プロボクシング史上、最高の試合でしょう(ファイティング原田vsエディ・ジョフレもありますが…)。ウエイトコントロールに苦しんだ上に、この試合で金沢に打たれまくったオリバレスは精彩を欠くようになり、72年には王座陥落。フェザー級となりますが、階級を上げたことで、それまでのようにだいたい5回以内にKOで決着をつけるという無敵の強さはなくなります。『明日のジョー』のラスト、破れかぶれになったジョーの強打におびえるホセ・メンドーサは、金沢戦のオリバレスがモデルだと思います。
Bantamweight Ruben Olivares vs. Kazuyoshi Kanazawa II
なぜタイトルがIIとなっているかといいますと、金沢はメキシコで一度、オリバレスとやってKO負けくらっているんですよ。だからこれは第二戦目なんです。しかし、互いにクリンチしないし、疲れまくっているのにフェアな試合ですよね…。これと、今、やられているような試合を同じ世界戦と呼びたくはありません。
Number 199(1988/7/20)でビートたけしさんが金沢和良さんと対談しているんです。金沢さんは、奥さんの実家のお寺を嗣いで和尚になっていたんですが、酒場で出会って以来の友人だそうです。この対談は面白かった(pp.38-41)
たけし こん時おれ、新宿のジャズ喫茶のボーイやってたんだよな。「無知の涙」書いたあの永山則夫と早番、遅番組んでた。ちょうど安保闘争やなんかあって学校行かなくなって、何にもやることがない時でね。でもこれ観て、あれだけ人を熱狂させる人たちっていいなと思った。金沢さんが立ち上がって向かってくとこなんか、涙出てくるじゃない。もう圧倒的な感動があるな。
金沢 この試合の後、この人も引退しようと思ったんだって(中略)。
たけし まぁ、いまの審判だったら止めさせてると思うね。2度目のダウンしたあたりで、やらしてないよ。大体セコンドがタオル投げ入れてるんじゃないかぁ。最後に何と叫んだんですか?
金沢 「てめぇ、ぶっ殺してやる」って。逆に殺されちゃったけどね、漫画ですよ(笑)。あんなにせんだっていいのにね。でも、会場に来ていたメキシコ人たちも凄くこのシーンには感動したって、後で聞きました。
たけし おれ、これを観たとき、金沢って男悔い残ってないだろうな、って思ったね。
たけし (もう辞めたいと思っているんだ、という話の後)だけど、ここで投げ出してすっきりしちゃっていいのか。おれはイヤだよ。金沢さんの試合でいえば、おれ、いま8Rか9Rのあたりだと思っているからね(中略)14R、金沢さんが2回目のダウンのあと立ち上がったファイト、ワーッというあの叫びは、何ともいえないからさ。あれに感動するんですよ。おれもあそこまで追い込まれてなきゃいけないな、っていま改めて思ったね。
SS ロベルト・デュランvs.エステバン・デ・ヘスス 1978
ガッツ石松は日本が生んだ偉大なるライト級王者でしたが、その石松を含め日本人選手などを相手にしなかったWBA王者ロベルト・デュランが、当時たった一度だけノンタイトル戦で敗戦を喫したWBC世界ライト級王者エステバン・デ・ヘススと統一戦を行った意地の試合。昔でいえば、世界チャンピオンと同級1位の指名試合といったところですが、団体が別れているのでやらなくてもいい統一戦を行ったところがデュランの偉いところ。それを受けたヘススも素晴らしい。12回、デュランがヘススの体を浮かせるアッパー気味の右のカウンターでKO。ぼくが見たパンチの中で、こんなのは見たことがありません。
Roberto Duran -vs- Esteban DeJesus III 1978
SA マービン・ハグラーvs.トーマス・ハーンズ 1985
3階級制覇を賭けて挑んできたトーマス・ハーンズと初回から激しい打ち合いを演じ、得意のテンプルへの一撃から3回TKOで仕留めた試合。ハグラーのベストファイトでしょう。ハグラーはレナードにタイトルを盗まれれて引退しますが、ミドル級最強王者でしょう。生涯戦績 67戦62勝(52KO)3敗2分。あまりの強さに王者が対戦を忌避し、せっかくチャンスがめぐっても判定で盗まれることが相次ぎ、世界タイトルを取れたのはなんと54戦目。みんな強いと苦労したんです。当時、促成栽培なんか本当に一握りでした。
Marvin Hagler VS Thomas Hearns
ハグラーはベスト・バウトもまとめられています。
THE BEST OF MARVIN HAGLER
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