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December 01, 2025

『新しい階級社会』橋本健二

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『新しい階級社会』橋本健二、講談社現代新書

 アンダークラスは未婚の人が多いため少子高齢化と密接に関係しているので、次は中流階級の落ちこぼれがアンダークラスになるという予想が衝撃的。

 歴史人口学者の速水融さんによると江戸時代、江戸と大阪ではほとんど人口が増えなかったが、これは集まった人々が子どもを残せない今のアンダークラスと同じような賃金しかもらっていなかったから、とのこと。今のアンダークラスの賃金も次世代の労働力を再生産する費用を含んでいません。

 こうした格差拡大は1980年前後に始まり、日本社会は後戻りができないまでに固定化され、いまや「新しい階級社会」が成立し「中流幻想」は過去の夢だ、と。自由、平等、民主主義は結果的に格差を生み、その固定化に寄与したのかもしれません。

 農民や自営業の「旧中間階級」はコロナ禍で没落し、変わって上昇したのが「新中間階級」。安定した雇用で家族や資産を形成できる大企業や官庁のホワイトカラー層で高学歴の持ち主。コロナ禍では日々の労働から賃金を得ていた旧中間階級とアンダークラスが感染を拡大した、という推察には「どうしたら良かったんだ」と考えさせられました。

 格差と政治意識について書かれた第8章が白眉。

 所属階級と思想・支持政党の分析・考察を行うと、保守層とリベラル層はアンダークラス、旧中間階級、正規雇用労働者、新中間階級、資本家階級の全てでそれぞれ2~3割いて、階級と考え方の左右はあまり対応していませんでした。思想傾向で分けると、新自由主義的右翼クラスタは外国人嫌悪を示すのですが、意外なことにそこは高学歴で平均年収も高い、と。

 また、日本に無党派の人が多いのは、リベラル、平和主義、無関心、伝統保守、新自由主義右翼という5つの考え方のクラスタに合った政党がないから、という推論はなるほどかも。

 かつての自民党支持層の中心だった伝統的保守は再分配に寛容ですが、アンダークラスの大量出現により、再分配に否定的な新自由主義的右翼が台頭。こうしたクラスタが参政党や保守党の支持に回り、国民民主には伝統的保守の一部が自民から流出した、と分析。

 新自由主義右翼が新興政党に流れれば、自民党は彼らを切り離して「伝統保守」の立場を取るかもしれないかも、と。

 なお、ジムで運動しながらAudibleで聴きました。

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