『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』齋藤ジン
『世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ』齋藤ジン、文春新書
ジムでエアロバイクを漕ぎながら聴いた本です。
東西冷戦後の世界秩序を支えてきた「新自由主義」の終焉、アメリカの視点から覇権国家に挑戦した日本のバブル崩壊と中国への締めつけを説明してくれています。
まず、新自由主義=グローバリズムへの反乱が各国で起こったのは、「システムの信頼(コンフィデンス)の揺らぎ」が生じたから。安い労働力を求めて国内から脱出し、アメリカではラストベルト、日本では氷河期世代を残したグローバリストに対して、明確に政治的なNOが突き付けられています。
日本が戦後、驚異的な復興をなしえたのは、もちろん勤勉さもあるでしょうが、ソ連と中国を太平洋で食い止める地政学的な役割を期待され、朝鮮戦争、ベトナム戦争では兵站基地となっていたから。
しかし、東西冷戦が終結してしまえば、自動車と半導体という分野でアメリカを脅かす地位にまで上りつめた日本は落とし込まなければなりませんでした。そして、様々な輸出規制や円高誘導などにより、日本から第二次産業を追い出すことに成功します。また、日本の政財界、労働界も、それまで蓄えてきた富を利用して雇用維持のために「共に貧乏になる」という痛み分けを選択したことで「失われた30年」となりました。
当時の日米交渉をがん患者に抗がん剤を投入する医師の関係として説明するところは出色。日米交渉で米国側はどんどん目標値や対象品目を変えたりして、そのたびに日本側は「ゴールを動かさないでほしい」と抗議していました。しかし、アメリカ側が目標としていたのは日本の骨抜き=ガン根絶だったので、医師としては必要な抗がん剤をどんどん投入するだけだった、と。
この構図は米中交渉でも同じでしょう。WTO加盟などを後押ししてくれた米国が、そこまで中国を嫌うハズがないと考えていた中国は、90年代の日本と同じように「ゴールポストを動かすな」と抗議していましたが、目的が中国抜き=ガン根絶なので、そこまでいくんだろうな、と。
そして、著者の見立てでいけば、次ぎはまた日本の時代となる、と。
こうした「システムの歪みを見抜く能力」は、著者が性的マイノリティであったこととカミングアウトしているところも面白かった。著者は邦銀につとめていましたが、バブル崩壊直後に見切りをつけ渡米、当時はまだ日本を有力な顧客とみていたファンドに拾われます。
そんな齋藤ジンさんの有力な人脈のひとりはトランプ政権の経済政策の舵取り役であるスコット・ベッセント財務長官。ベッセント財務長官は元検事のジョン・フリーマンと結婚して二人の子供を育てているゲイです。
ベッセントはトランプ大統領の宿敵、ジョージ・ソロスの元で1992年のポンド危機で成功を収め、その後の超円高、アベノミクス相場では齋藤ジンさんのアドバイスを受けて信頼関係を築いていったと言われていますが、性的マイノリティの方々はこうした融通が効く性格を持っているというのは面白いな、と。
日経のインタビューで齋藤ジンさんが「トランプ支持者の凄いところは、補助金をくれとはいわず、仕事をくれ、と要求したこと」と言っていましたが、これからも注目していきたいと思います。
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