『自分を傷つけずにはいられない』と『叫びとささやき』
『自分を傷つけずにはいられない 自傷から回復するためのヒント』松本俊彦、講談社
『身近な薬物のはなし タバコ・カフェイン・酒・くすり』が面白かったので、松本俊彦さんの『自分を傷つけずにはいられない』をいつものように、ジムの有酸素運動の間にAudibleで聴きました。
正直、自傷行為はあまり理解できなかったんですが、自傷は「心の痛み」に対する「鎮痛薬」として機能し、安堵感をもたらす、という説明でなるほどな、と。それは脳内麻薬が分泌されるからだ、と。
あと、自傷は周りをコントロールするためにやる場合もある、みたいなところで、昔観たベルイマンの『叫びとささやき』で同じようなことをする場面の意味が初めて分かったような気がしたので少し書いてみます(念のため言っておきますが、自傷行為をするような人は「かまってちゃん」だと言いたいわけではありません…)。
『叫びとささやき』は日比谷みゆき座のロードショーで観ました。ベルイマン作品をロードショーで観たのは初めてだったかな。新春第二弾の封切だったらしく、それを考えると中学生の時でした。
映画の中心はイングリッド・チューリン、ハリエット・アンデルソン、リヴ・ウルマンが演じる三姉妹のカーリン、アグネス、マリア。
女中アンナと今も真っ赤な装飾の屋敷に暮らす次女アグネスは未婚で末期ガン。それを看取るために姉カーリンと妹マリアが屋敷を訪れ、アグネスの葬儀が終わり、残ったカーリンとマリアと女中アンナが別れていくまでを描きます。
で、当時、どうしてもわかんなかった場面があったんですよね(その場面だけじゃなかったけどw)。
長女カーリンは歳の離れた外交官と結婚していたんですが、食事を終えると夫が口にするのは「もう遅いからベッドに入ろう」という強蔵の台詞。そんな関係に悩んでいたカーリンは割れたグラスの破片で大事なところを傷つけ、夫ににそれを見せるというシーンがありました。で、松本先生によると、自傷は周りをコントロールするためにやる場合もあるという説明で、あれはそうした段階のことだったのかな、と。
松本先生によると自傷経験者は、人生の早い時期から問題を抱えている場合が多いそうで、もし自傷を告白された場合は肯定的に評価し、冷静に対応することが重要としていますが、あの外交官の夫にそんなことができるか不安ですし、自傷にはアディクションの側面もあるということなので、イングリッド・チューリンのことが心配になってきます。
『叫びとささやき』はスウェーデン語の原題"Viskninger Och Rop"も「叫びとささやき」なんですが、自傷行為も「叫びとささやき」なのかもしれません。
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