『炎と怒り トランプ政権の内幕』マイケル・ウォルフ
『炎と怒り トランプ政権の内幕』マイケル・ウォルフ、早川書房
エアロバイク漕ぎながら聴いていたAudibleはトランプ政権一期目の1年弱を扱った『炎と怒り』でした。
トランプの大統領個人の資質としては、やたら友人たちに夜の電話をしまくり、会議での長時間のブリーフィングには耐えられず、資料も読まないという感じの描写が続きます(マクマスターなどはパワーポイント将軍と嫌って解任)。トランプの基本のモチベーションは皆んなから愛されたいという欲求だけど、それがかなわないと反動で攻撃的にでる、みたいな感じで、ま、予想通りであまりビックリすることはありませんでした(本当は衝撃を受けなければならないのかもしれませんが)。
メラニア夫人については、誰もトランプとメラニアの私生活については知らず、トランプ自身の結婚観については「所詮は他人だ」と言っていたというのが面白かった。
主に描かれているのはクシュナーとイバンカ夫妻vs選挙戦を立て直して主席戦略官となったスティーブ・バノンの主導権争い。
バノンは就任1年目の夏場には政権を去り、クシュナーとイバンカ夫妻の勝利となります。著者の見立てではトランプ現象を新たに率いるのはオルタナ右翼のバノンのハズでしたが、現在ほとんど影響力を失っています。
この本で激しく批判されたクシュナーとイバンカ夫妻は2次政権ではホワイトハウス入りはせず、親しいスージー・ワイルズ大統領首席補佐官を通じて影響力を行使する、というスタンスになっているようで、結局トランプ1.0の主要人物で生き残ったのはトランプ本人だけだった、という感じです。
「この本でトランプ政権は終わるだろう」とインタビューに答えていた著者の予想も外れてバイデンを挟んでまさかのトランプ2.0がスタートし、関税で世界経済を大混乱に陥れるとは、いくら政治の世界は「一寸先は闇」とはいっても、誰も予想できないことだったようです。
細かなところで印象に残ったのはトランプがマクドナルドを好むのは、衆人環視で調理されるマクドナルドのハンバーグを食べていれば毒殺されにくいからとか、やはり毒殺を恐れてホワイトハウスでも歯ブラシには誰も触らせなかった、というあたりでしょうか。
にしても、イーロンは一時政権の経営者フォーラムから離脱してるんだな…と。そして、イーロンも長く政権に留まることはないとトランプ本人からもアナウンスされましたが、歴史は二度繰り返すというのは、トランプ政権の場合、一次のバノンと二次のイーロンなんだろうな、と。
政治はトランプが現れる前は企業間取引のB to Beみたいに一般人には理解不能になっていたから、分かりやすい言葉で語ってくれるトランプはMAGA支持層から熱狂的に受け入れられたんだろうな、と。
この本は第一次トランプ政権の発足前から、夏の終わりぐらいの1年弱ぐらいのことを書いているんですが、襲撃事件も描いてほしかったな。
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