『風土記』橋本雅之編、角川ソフィア文庫
『風土記』橋本雅之編、角川ソフィア文庫
今年は、平安朝の日記を角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックスのシリーズで読むことが多かったのですが、まさか『風土記』にまで手を出すことになるとは、自分でも驚きでした。しかし、なんというか新鮮。読んで良かったです。
まとも読んでいないので素人感想も過ぎますが、常陸国が抜群に面白かったです。記紀の東国は伊勢だったりするけど、ヤマト王権が関東まで進出していくのをライブで読ませてもらった感じ。
また《渡来系の神や氏族に関する伝説の背景には、土地の占有をめぐって在地の人々と対立していた歴史があったのではないかと想像される。しかし、やがて渡来系の神や氏族と在地の神や人々が和解し、その土地で共存融和した歴史があったことも風土記に残された伝説から読み取る》(k.3036、kはkindle番号)こともできました。
さらには大泊(雄略天皇)から白髪(清寧天皇)にかけての混乱が、記紀以外の土地伝説としても残されているとは驚きでした(無知を恥じますw)。《記紀では清寧天皇崩御後に皇位を継ぐべき皇子がいなくなってしまったという深刻な問題に端を発して、播磨で発見された二人の皇子が皇位を継承して皇統断絶の危機が回避されたいきさつを重視しているのに対して、風土記ではあくまで志深の里の伝承として》風土記では語られています(k.3362)。
《『古事記』では分からない、『日本書紀』には残されていない、『万葉集』が見逃した郷土の伝説が風土記には豊富に残されている》(k.6056)のです。
編者のまとめによりますと《現存の風土記は、五風土記とも呼ばれる『常陸国風土記』『播磨国風土記』『出雲国風土記』『肥前国風土記』『豊後国風土記』と、他の文献に部分的に引用されて伝来した「逸文風土記」》だそうで(k.6076)、本書は五風土記と「逸文風土記」のなかのいくつか伝承を取り上げています。
《国造が統治していた「国」を「郡」という下部単位とし、その「郡」をいくつか集めて新たな「国」が形成されていったと考えられている》(k.247)のですが、《風土記とは、地方の人々の生活空間である「里」の目線で見た「里の神話(伝承)」「里の歴史」をまとめた地誌》とのこと(k.6098)。
自分のなかの知識の空白部分を少し埋めることができ、本当にありがたい読書体験となりました。
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