追悼、ポール・オースター
あまり小説は読まない方なんですが、ポール・オースターは結構、読みました。数年前に蔵書を1/3にした時も整理できませんでした。
「アメリカ文学史上初めて現れたエレガントな前衛」というのが日経の追悼記事に載っていましたが、なるほどな、と。朝日に載った柴田元幸さんの追悼文の中の「老いを喪失でなく新たな可能性模索の機と捉える姿勢」という言葉も印象的でした。
オースターの中で好きな作品を、多くの方と多分違う方向から選ぶとすれば『トゥルー・ストーリーズ』と『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』と"TIMBUKTU"ですかね。
『ナショナル…』の方は編者だけど、立派なオースターの作品になってます。
"TIMBUKTU"は高校時代の女性教師が素晴らしかったな。読みやすい英語でした。
『トゥルー…』では。アート専門の書店につとめていた頃、ジョン・レノンがマン・レイの写真集を見せてほしいと現れて、オースターと
《「ハイ」と彼は片手をつき出しながら言った「僕はジョン」
「ハイ」と私はその手を握って大きく振りながら言った。「僕はポール」》
と挨拶する場面とかよかったな。
《『グアヤキ年代記』という文化人類学の大著の英訳が刊行されたとNYタイムズで読んだ。訳者は若い頃のオースター。「上質な小説の味わい」と惚れこんで訳したのに版元は潰れ、ゲラ刷りは紛失し、原作者は物故して発表の目途が絶たれてしまったという。
ところが、ゲラは20年後に舞い戻った。友人が古書店で偶然手に入れたのだ。わずか5ドルで。どこまでもオースターらしくて感心したのを覚えている。この顛末を綴ったエッセイ》も素晴らしかった。
合掌。
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