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June 20, 2022

『ビーバー: 世界を救う可愛いすぎる生物』

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『ビーバー: 世界を救う可愛いすぎる生物』ベン・ゴールドファーブ、木高恵子(訳)、草思社

 久々に読書を純粋に楽しみました。

 他の本も読みながら、ゆっくりと。

 出かける時に、註を含めると500頁を超えるぶ厚い本を持ち出すのは大変でしたが、それ以上の喜びを得ることができました。

 なにしろビーバーは健気で可愛い。

 北米大陸の生態系をつくっていたビーバー(カストル・カナデンシス)が欧州からの移民と西部開拓によって米国内ではほとんど絶滅寸前となり、その結果、イエローストーン国立公園を流れる河川も修復不可能なほど痛めつけられていたというのは驚きでした。

 ビーバーダムは夏には干上がってしまうような川でも地下水涵養能力を高めるとのことですが、ビーバーがいなくなったイエローストーン国立公園は、いま大雨による洪水と大規模な土砂崩れが発生。公園内の道路が濁流によって崩落したほどだそうです。

 それは、シカの異常繁殖によって河川を守る草木が食べ尽くされ、土が浸食されて潰滅的な状態となり、保水能力を失っていたからなんだろうな、と(第八章によると実際、ビーバーを移転させようとしても難しいほどだそうです)。

 アメリカの西部開拓は高価なビーバーの毛皮目当てという側面も大きかったというのも初めて知りました。

 河川を自然状態に保ち、魚や鳥、両生類などの住み処を与えていたビーバーダムがなくなると、大地と川は保水能力を失い、カリフォルニア州などは慢性的な水不足に悩んでいるんだな、というのも納得です(映画『チャイナ・タウン』あたりでも水不足が描かれていましたっけ)。

 同じようにグレートブリテン島からもヨーロッパビーバー(Castor fiber)はいなくなり、水不足に悩んでいるのかな、と。

 家畜の管理放牧(河川に近づかせない)とビーバーの移転によって荒廃したネバダ州の川が復活していった写真は感動的です(p.81の反対側のカラー頁)。

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 人間の手による土木的生態系復元には、全米で12万6000人が従事しているそうですが、時として短期的な目標設定によって失敗するよりも《高い能力と労働力を無償で提供し、高価な介入の必要性を排除する》ビーバーに任せた方がいい、というのが著者の結論。《彼らは、人間が常に最善の方法を知っているわけではないということを、四本の脚で証明している。生態系に対する私たちの記憶は短期的で間違っていることが多いが、彼らの本能は確実で永遠である》と(p.466)。

 日本列島にはユーラシア大陸経由のビーバーはやって来なかったようですが、愛らしい姿を野生で見たくなりました。

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