« 『前だけを見る力』松本光平、宇都宮徹壱 | Main | 『夢介千両みやげ』山手樹一郎 »

April 06, 2022

"Why we sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams" Matthew Walker

Why-we-sleep

"Why we sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams" Matthew Walker

ジムで筋トレ後の有酸素運動でエアロバイクをこぎながら、英語のサビ落としを目的にAudibleで聞いている本の14冊目は"Why we sleep"。

邦訳は出ていないようですし、周りでも睡眠障害に悩んでいる方が多いので、チラッとまとめてみようと思います。

強調されているのは睡眠の重要性。5時間以下の睡眠で障害なく生き残ることができる人はほぼゼロで、睡眠は免疫システムの武器を補充し、悪性腫瘍との戦いを助け、感染を防ぎ、あらゆる種類の病気を防ぐ、と。

ぼくはありがたいことに、まだ子どものように眠ることができるのですが、そうでない方に、ざっくりとした良い睡眠を得られる方法をまずご紹介しますと…

・プルーライトを発するLEDの電球、ガジェット類を寝室からとり除く

・睡眠を正常に開始するため室温は摂氏18℃ぐらいに下げる

・アルコールは睡眠補助剤ではなく、レム睡眠を抑制するものだと心得る

・昼寝は健康を改善し寿命を延ばす(ただし午後3時前まで)

となります。

とにかく睡眠は学習、精神状態を改善し、ホルモンを調節し、癌、アルツハイマー病、糖尿病を予防し、老化を遅らせ、寿命を延ばす。と。

ヒトは覚醒状態で周囲の世界を経験的に学習し受容するのですが、ノンレム睡眠によって新しく得られた事実やスキルの原材料を保存、強化。さらにレム睡眠によってこれらの原材料を過去のすべての経験と相互接続して統合。革新的な洞察や問題を解決する能力を生む、と。

途中、ピテカントロプスエレクトゥスが火を使うようになって、比較的安全に地上で眠ることができるようになったことに触れられています。ぐっすりと地上で眠れることになったことにより、覚醒時のサバイバルスキルが向上し、創造性と革新が促進され、記憶の統合が促進された可能性がある、と。こうした睡眠の変化が類人猿の認知的進化にとって重要であったかもしれない、と。

睡眠に重要なのはサーカディアンリズムとアデノシン。

覚醒と睡眠を決定するのはサーカディアンリズム(概日リズム)。

メラトニンは体内時計に働きかけることで、覚醒と睡眠を切り替えて、自然な眠りを誘う作用があり、「睡眠ホルモン」とも呼ばれていますが、暗闇を知らせることによって睡眠が発生するタイミングを調整するのには役立つものの、睡眠の生成自体にはほとんど影響を与えません。

眠気に影響を与えるのは脳内のアデノシンの蓄積によって引き起こされる睡眠圧です。カフェインは、アデノシンが影響を与える受容体をブロックするので、飲むなら午前中。カフェインを体内で速く処理できる人もいますが、加齢とともにその効率は低下します。

個人的には「第3章 睡眠の定義と生成 Defining and Generating Sleep」の睡眠と情報処理のシステムが面白かった。

・覚醒状態は受容(周囲の世界を経験し、絶えず学習)

・ノンレム睡眠は反射(新しい事実やスキルの原材料を保存、強化)

・レム睡眠は統合(これらの原材料を過去のすべての経験と相互接続し、革新的な洞察や問題を解決する能力を生む)→レム睡眠中に筋肉の活動がされるのは夢が妨げられるから、と。

狩猟採集民はいまでも夜に7-8時間の長い睡眠時間を取るとともに昼寝をするそうです。さらに先進地域でも、ギリシャのイカリア島のようにシエスタの習慣が残っているところの男性の寿命が90歳に達する可能性はアメリカ人男性のほぼ4倍ある、と。このように夜の1回の睡眠の他に、昼寝をすることは重要で、我々がそれを失ったことの影響は大きい、と。

第5章-ヒトの生涯と睡眠の変化

アルコールはレム睡眠の最も強力な抑制剤。

子ども時代の深い睡眠は脳成熟の原動力である可能性があります。思春期の若者の睡眠時間も守らなければなりません。

高齢者は必要とする睡眠が少ないというのは神話。高齢者は中年期と同じくらい多くの睡眠を必要としているのですが、そのまだ必要な睡眠を得ることが難しくなってきます。ヒトは40代に入ると、深いノンレム睡眠の質が明らかに低下します。

年をとるにつれての睡眠の変化は断片化です。年をとるほど、夜通し目覚める頻度が高くなります。健康なティーンエイジャーは約95パーセントの睡眠効率を誇りますが(睡眠効率は就寝中に実際に眠っていた時間の割合)、高齢者は睡眠の断片化によって睡眠効率の低下に苦しむことになります。

 残りのパートをこの勢いでまとめると長くなりますので、全体のポイントをおさらいすると以下のようになります。でも"Why we sleep"はAudibleで聴き流しただけで、その後、いろんな資料なども読みましたが、それらを読み直してはいません。談志師匠が『談志映画噺』での『絹の靴下』の語りで、シド・チャリシーにからんでくる3人組について《一人はピーター・ローレ、もうひとりがジュールス・マンシンでしょ、あともうひとりがジョセフ・バロフ? えーと、家元はね、記憶力は凄いんだけど、資料ってもんを見ないで書いているので不完全さにおいても、これまた凄い》(p.74)と資料をみないと公言してるんですが、ま、そんな感じでお許しください。

・レム睡眠はヒトの感情回路を微調整して創造性を刺激するだけでなく、睡眠は学習に有益

・質の高い睡眠は年をとるにつれて難しくなるが、それでも重要

・失われた睡眠を埋め合わせることは不可能

・内部時計である視交叉上核はすこし長く、深部体温もサーカディアンリズムに関係する

・アデノシンは1日を通じて脳内に蓄積して睡眠圧を増加させる化学物質

・視交叉上核のサーカディアンリズムとアデノシンの睡眠圧信号は別個のシステム(通常は平行)

・間脳の一部を占める視床は脳の感覚ゲートで、眠っている間に入ってくる感覚信号をブロックする

・NREM(Non-rapid eye movement、ノンレム睡眠)は不要な神経接続を取り除く

・REM(Rapid eye movement、レム睡眠)は目覚めているときとほぼ同じ脳活動を示し、夢に関連して経験などを統合する

・サーカディアンリズムの発達は遅く、自閉症児はレム睡眠が少ない

・ティーンエイジャーのサーカディアンリズムリズムは前にシフトするので午後10時に就寝するのは大人に7時に眠れと言っているようなもの

・ノンレム睡眠の衰退は20代後半から進行。高齢者は睡眠効率スコアが低いほど死亡リスクが高まり、うつ病に苦しむ可能性が高くなり、認知機能が低下する

・睡眠は脳の学習能力を回復させ、新しい記憶の余地を作り、記憶の「保存」ボタンをクリックするようなもの

・深いノンレム睡眠の遅い脳波はメモリパケットを一時的な保管場所である海馬から皮質に移す

・睡眠は短期記憶のキャッシュをクリアする

・睡眠は運動能力も高め、怪我に対する保険にもなる

・夢の時間はリアルタイムに比べて長くなる

・睡眠不足による自動車事故は、アルコールや薬物による事故を上回っている

・睡眠不足は低レベルの脳損傷であり、睡眠は神経的衛生管理

・睡眠が少ないとアルツハイマー、癌、聴覚障害の発症リスクが大幅に高まり、短命となる

・夏時間への切り替えで心臓発作が急増する

・睡眠不足は筋肉を消費すると同時に食べる量を増やすので体重増や糖尿病の原因となる

・レム睡眠は感情を経験から切り離すのに役立つ

・悪夢のようなライフイベントを夢見ることで、人々は絶望から臨床的解決を得られ、脳の感情を調整する

・睡眠は目覚めている時に気付いていない遠くの関連情報を接続する

・睡眠障害には夢遊病、夢遊病、ナルコレプシーがある

・不眠症はアメリカ人の1/9、4000万人が苦しんでいる

・ネズミは眠らせないと15日後には死亡する

・アルコールはレム睡眠を抑圧する

・睡眠薬による睡眠の質は不十分で、癌を発症する可能性が非常に高くなる

・脳はウィークデイに奪われた睡眠を週末に回復するようにはできいない

・6時間以下の睡眠だとヒトは嘘をついたり、騙したり、盗んだり、他人への非難をするようになる

・学校の開始時間を遅らせて睡眠時間を増やすことで、ティーンエイジャーの心身は改善さる

・ADHDの50%以上が睡眠障害

・誤診は心臓発作や癌に続く3番目に多い死因で、研修医の5人に1人は睡眠不足に起因する誤診を犯し、20人に1人は睡眠不足のために患者を殺す

・手術を受ける場合は、担当医師に「どのくらいの睡眠をとったか」と尋ねるべき

・人々が睡眠を優先するようになば社会保険料は下がる

あとは、印象に残った章を…

第8章 癌、心臓発作と短命

 睡眠が短いほど短命になる。現代の主な死因である心臓病、肥満、認知症、糖尿病、癌などはすべて睡眠不足と因果関係を持っている。睡眠不足は、空腹感と食欲を増加させ、脳内の衝動制御を危うくし、高カロリー食品の食欲を増加させる。痩せて健康な若い男性でも睡眠時間を5時間に制限するとテストステロンが低下する。、睡眠不足は感染の可能性を大幅に高め、インフルエンザワクチンなどへの反応を低下させる。

第10章 療法としての夢

 レム睡眠は脳が不安を誘発する分子を取り除く唯一の時間であり、レム睡眠を欠いた脳にとって外の世界の刺激は脅迫的で嫌悪的なものになる。

13章

お時間ない方はここだけでも!

iPadでの読書は、印刷された本を読んだときと比べてメラトニンの上昇を最大3時間遅らせる。

夕方の時間を過ごす部屋に低くて薄暗い光にし、天井からの照明は避ける。

アルコールを飲んだ後の睡眠は継続が難しくなり、レム睡眠を抑制する。

お風呂から出ると、表面の拡張した血管がすぐに内部の熱を放出し、コア体温が急降下するで、より早く眠りにつくことができ、健康な成人は10~15%程度の深いノンレム睡眠を得られる。

14章

現在の睡眠薬は自然な睡眠を誘発しない。

睡眠薬を服用している人は、睡眠薬を使用していない人よりも、死亡する可能性は4.6倍高く、年間132錠以上を服用しているヘビーユーザーは5.3倍高い。

こうした人はセラピストと協力して悪い睡眠習慣を打ち破り、睡眠を妨げてきた不安に対処することが重要だが、簡単なのはカフェインとアルコールの摂取量を減らし、寝室からガジェットを取り除き、涼しい寝室を作ること。

第15章 睡眠と社会:医学と教育が間違っていること

健康的な睡眠のための12のヒント

睡眠スケジュールに固執する

運動は素晴らしいが、就寝時刻の2~3時間前までにすませること

カフェインとニコチンは避ける

就寝前の飲酒は避ける

夜遅くに大量の食事や飲み物を避ける

可能であれば、睡眠を遅らせたり混乱させたりする薬は避ける

午後3時以降は昼寝をしない

寝る前にリラックスする。読書や音楽鑑賞などのリラックスできる時間は、就寝儀式のひとつとして意識する

寝る前にお風呂に入る

暗い寝室、涼しい寝室、ガジェットのない寝室をつくる

身体を日光にさらすことは重要で、日光は毎日の睡眠パターンを調整するための鍵。毎日少なくとも30分間、自然光の中で外に出るようにすべき。可能であれば太陽で目を覚し、朝は明るいライトを使用する

起きてベッドに横にならないこと

|

« 『前だけを見る力』松本光平、宇都宮徹壱 | Main | 『夢介千両みやげ』山手樹一郎 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 『前だけを見る力』松本光平、宇都宮徹壱 | Main | 『夢介千両みやげ』山手樹一郎 »