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April 06, 2022

『前だけを見る力』松本光平、宇都宮徹壱

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『前だけを見る力 失明危機に陥った僕が世界一に挑む理由』松本光平、宇都宮徹壱、KADOKAWA

 テレビの「激レアさんを連れてきた」にも出演した松本光平選手のレアすぎるというかアップダウンの激しすぎる半生を、宇都宮徹壱さんによる構成と語りおこしと周辺の人物へのインタビューでまとめた本。

 なにせ19年FIFAクラブワールドカップに念願かなってオセアニア代表として出場を果たした直後に、自宅でのトレーニング中の事故で失明の危機に直面し、コロナ禍で世界一厳しいと言われたロックダウンを敷いていたニュージーランドから「脱出」。世界的にも有名な横浜の深作眼科・深作秀春ドクターの手術をクラウドファンディングを元にした資金で受け、なんとか眼球摘出は免れ、右目はほぼ失明で左目も弱視に近い状態から「再びクラブワールドカップの舞台に立つ」ため動き始めるという波瀾万丈ぶり。

 しかし、感動を誘おうとするいわゆる「難病もの」とは違い、それまでの人生は波乱爆笑の連続。

 最初渡った英国では、英語が分からないフリをして相手が何を言ってきても「笑顔でサンキュー」と答えてサッカークラブのセレクションや練習に参加したり、ニューカレドニアのチームメイトは野生動物を狩って暮らしていたり、フィジーでは他人がいつのまにか家で寝ていたりご飯を食べているのが普通だったりと、聞いたこともないエピソードばかり。バヌアツでプレーしていた時には現日本代表の森保監督の長男もいたとか。

 だいたいユースの時にもセレッソからガンバへの禁断の移籍を行い、結局はトップチームに上がれず、いきなり海外に飛びだすというんですから、その行動力は驚きます。

 どんな想定外の事態に立ち至っても新しいモチベーションを自らつくってを奮い立たせることのできる松本選手は「ポスト・コロナの時代を生き抜くためのヒント」(プロローグ)かもしれませんし、「しなやかなメンタリティ」が失明寸前となり、白杖を使っていても再び世界を目指すポジティブな生き方を支えているのかもしれません。松本選手のマネージャーでメンタルトレーナーでもある宮島さんの「人が落ち込むときって、自分でコントロールできないことに、ついフォーカスしてしまう」という言葉はなるほどな、と思うと同時に、松本選手にはそうした自分でコントロールできないことへの免疫ができているという評価は面白いと感じました。

 「激レアさん」に出たこともある元サッカー選手の経営者に帰国やクラファンで助けてもらったというんですが、その方の「松本さんの方が、よっぽど激レアさんですね」という感想が全て物語っている感じ。

 東京パラリンピックでブラインドサッカーは有名になりましたが、弱視者を対象にしたロービジョンフットサルという競技もあるのも、松本選手のチャレンジの中で知りました。この本ではありませんが、障害者で人口が多い聾唖者はパラリンピックから外れたデフリンピックを開催しているそうで、そこでもサッカー日本代表があるそうです。サッカーという入口だけで、色々な世界と広がっているんだな、と改めて感じました。

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