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December 06, 2021

The lonely Century (邦訳『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』)

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The lonely Century : Coming Together in a World That's Pulling Apart by Noreena Hertz

 ジムで筋トレ後の有酸素運動でエアロバイクをこぎながら、英語のサビ落としを目的にAudibleで聞いている本の12冊目(邦訳は『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』ノリーナ・ハーツ、藤原朝子(訳)、ダイヤモンド社)。例によって聞き流しで、再読もしておりませんので、よろしくお願いします。

 とにかく、これはサブカルチャーに強い経済学者という感じのノリーナ・ハーツによるタイムリーな本。住宅価格の上昇の中でパンデミックが襲い、世界中の政府がステイホームをプロパガンダする以前から、我々の孤立、孤独、疎外は進んでいた、みたいな。それまでも他人との接触は、携帯電話やコンピュータネットワークを介して行われおり、やがては「思いやりのあるAI」とロボットが解決策になるかもしれないというディストピアっぽい未来さえも垣間見せてくれる。

 著者はスマホに夢中になっている大学生向けの「顔色をうかがうことによる実生活でのコミュニケーション方法」の授業やベルギーの極右集会から日本のロボット介護を採用している老人ホームまで幅広く事例を収集。そして、かつてはありふれたものであったカジュアルでありながら実は深かった人間関係が失われていることを報告します。

 孤独は精神だけでなく健康にも驚くほどダメージを与え、免疫力を下げて心臓病、脳卒中、認知症のリスクを高め、早死にする確率を3割も高めるともしています。統計的には、1日に15本のタバコを吸うのと同じくらい孤独は健康を害する、と。孤独や疎外は個人の健康や富、幸福を損なうだけでなく、ポピュリズムによって民主主義さえも脅かす例としては、オバマのクリーンコール法によって見捨てられたと感じた技師がとりあげられています。彼はトランプによって話しを聞いてもらえたと思い、「部外者(移民、エリート)」に対する怒りをかき立てられるようになります。

 つまり、孤独は個人だけでなく社会をも破壊する、と。

 著者のように新自由主義だけでなく、個人的な感想としては、リベラルな思想も「私」の要素を高めた個人主義を奨励することによって、かえって自分たちが市民ではなく消費者として理解されるように仕向けられた結果なのかもしれません。

 ネットワーク化されたホワイトカラーのオフィスやギグエコノミーに支配されるブルーカラーの職場環境からのがれようとしても、公共スペース(公園、図書館、地元の店)はますます減少しています。そして、Facebookで「いいね」と引き換えに、ありのままの自分ではないバージョンを提示するようになってしまう、と。

 ただし、解決策として提示されている「思いやりのあるAI」は、同僚とのおしゃべりだけでなく、トイレに行くことさえ監視されるハイテク企業の倉庫作業員に似ている感じがしなくもないのはどうなんでしょうか。

 以下、ざっと章ごとに。

[孤独な世紀]
私たちはコロナが蔓延する前からアプリでヨガのクラスに参加したり、人間の営業担当者の代わりにカスタマーサービスチャットボットを使用して話します、ライブストリーミングで宗教活動に参加したり、Amazonで他人と接触することなく買い物できました。非接触的な生き方は私たちの選択になっていた、と。緊縮財政の政策によって世界中の図書館、公園、遊び場、若者やコミュニティセンターが打撃を受け、英国では08~18年の間に800近くの公共図書館が、米国では08~19年の間に図書館の予算が40%以上減少した、と。

[孤独は殺人者]
孤独はな高いストレスを与えます。それは攻撃を受けた時に「戦うか逃げるか」の反応を引き出すために分泌されるホルモンと同じストレス反応です。そうした脅威が去った後、私たちの脈拍、血圧、呼吸などのバイタルサインは普通の水準に戻りますが、孤独はリセットされません。

[孤独な街]
匿名性は敵意と不注意を生み、人口密度の高い都市ほど無愛想さを生む。

[一人暮らし]
独身生活は積極的な選択であり、独立と経済的自立がもたらしたものですが、18年に発表されたEUの孤独に関するレポートによると、一人暮らしの人は、他の人と一緒に暮らしている人よりも孤独を感じるリスクが10パーセント近く高くなっている。一人暮らしの人は人生で最も困難な時期や脆弱な時期に孤独を感じることがある、と。

[自分はスクリーン]

私たちが毎日スマホをチェックする回数は平均221回だそうです。シドニー、テルアビブのでは歩行者がスマホ画面から目を離すことなく安全に横断できる信号が設置されています。
最近の調査では、見知らぬ人がスマートフォンを持っていると、お互いの笑顔が非常に少なくなるそうです。

[私のアバターが大好き]
Facebookで共有する私生活は意欲的な日常と美しい風景、美味しそうな食べ物であり、怠惰な日常ではありません。明るく健康的にフィルタリングされたバージョンを自分でも好きになってきており、整形外科医の55%がPhotoshopで撮影した自撮り写真を再現するように依頼され、そうした比率は年年、高まっている、と。本物の自分はデジタルでエンハウンスド拡張されたものになりつつある、と。

[一人のオフィス]
空気清浄機は設置されているものの全員が同じ空気を吸い込むオープンレイアウトのオフィスではバイオハザードのようにコロナのクラスタが発生しました。オープンプランのオフィスは精神面だけでなく、健康面でも働く人を疎外している、と。

[デジタルに乗っ取られた職場]
よそよそしいメールに支配された職場環境は、そこから離れても、人と適切に話したりコミュニケーションしたりするのに時間がかかり、切り替えに労力を要します。

[常にオン]
家族の時間、学校の遊び、深夜のベッドからでさえ上司、クライアント、同僚に応答しなければならない状況は異常だ、と。

[従業員ケアの支払い]
19年、日本のマイクロソフトは賃金を下げることなく休暇を与え、最大10万円を与えたところ会議が効率的になり、欠席が減少、生産性が向上。さらには電力などのコストダウンにもつながった、と。

以下でテキストが読めるハズです。

https://books.google.co.jp/books?id=jVacDwAAQBAJ&pg=PT9&lpg=PT9&dq=The+lonely+Century+Noreena+Hertz+Chapter&source=bl&ots=X3ELLWLUNL&sig=ACfU3U0Mlb_zzjz1E1grhtXNnFj3YWrF0g&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwjbk8qG_s30AhVCG6YKHdKyBCsQ6AF6BAgjEAM#v=onepage&q=The%20lonely%20Century%20Noreena%20Hertz%20Chapter&f=false

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