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November 10, 2021

『古代史講義【氏族篇】』

Kodaishi-kogi-shizoku

『古代史講義【氏族篇】』佐藤信、ちくま新書

 勉強不足のせいで、不案内な情報が多く、遅々として読書は進まなかったのですが、読後は目からウロコの話しばかりだった印象。

 古代の列島は氏へ結集する豪族よりも官僚を重視する律令制度へと変わっていくわけですが、それにしても氏姓制度というのはイマイチ分かりにくい。氏(ウジ)の名は蘇我のように居住地によるものと、物部、中臣、忌部、土師など職業の名によるものとがあり、氏姓をない者は皇族と奴婢だった、と。でも氏は臣、連などの姓(カバネ)をもって政務に参加とか、いまひとつスッキリわからない。

 全15講の最初の大伴氏の説明では、氏族は族長を頂点として血縁集団としてまとまり、共通の祖を持つ氏であるとともに、王権から氏の名前と姓をもらって職掌を果たす政治的集団である、としています(p.12)。

 続いて皇別のウジには臣のカバネ、神別のウジには連のカバネが与えられたが例外も多いとして、物部氏の職掌の説明に入っていきます(p.36)。これよると物部氏は武器・祭器の製作にあたっていた生産技術集団で、そこから軍事・警察的役割を果たし、派生的に祭祀的性格も持った、と。

 物部氏と蘇我氏の対立は、通説では仏教をめぐるものとされていましたが《大臣系氏族と大連系氏族の派閥争い、政争》とみるべきだそうです(p.58)。また、乙巳の変で討たれたのは本宗氏だけだというのもなるほどな、と(p.60)。

 阿部氏では皇別が皇族から分かれ、神別は神々の後裔だと説明されます。畿内では平安以後は衰えるものの、東国や東北では名門の安倍氏となる、と。

 佐伯氏では宿禰(すくね)・連・直・造・首というカバネが説明され、宿禰が最も地位が高い、と。佐伯氏は宮城の警護などの大伴氏とセットになっていることが多く、元日朝賀では門の左に大伴氏、右に佐伯氏が配置された、と。乙巳の変では佐伯子麻呂が蘇我入鹿を斬るなど、様々な内乱・政変に絡んでいるのも印象的。

 紀直氏は紀伊国北部の豪族としての権威を持ちながら中世的荘園領主へと変貌します。伊勢が、軍団の集結場所だということを知りました。日本史のプロの方には常識なのかも知らないけど北畠親房ら劣勢の南朝勢が伊勢から船を出して東国を目指したというのはノスタルジーだけでなく、インフラ的にも昔から使われてきたからなのかな、と。

 摂関時代の藤原氏(九条流・小野宮流)では、中宮は皇后の別称であったり、今帝の正后を中宮、選帝の正后を皇后と称したり(p.217)、道長の娘彰子が一条天皇の女御となった時は、第一皇子を産んでいた定子が皇后、彰子が中宮に立てられていたとか、いろいろあったんだな、と(p.219)

 おわりに《律令国家のもとで律令官僚制が導入されても、前代からの氏姓制も社会的に遺り、氏族の存在は無視できないものがあった》(p.279)とあり、貴族たちは娘を入内させることに血道をあげ、軍事貴族たちは在地の有力者の娘を娶り、中央と往復して継続して受領してもらう、ようになったと。

第1講 大伴氏(伴氏)
第2講 物部氏
第3講 蘇我氏
第4講 阿倍氏
第5講 藤原氏(鎌足~奈良時代)
第6講 橘氏
第7講 佐伯氏
第8講 紀氏
第9講 東漢氏と西文氏
第10講 菅原氏(土師氏)
第11講 藤原北家
第12講 摂関時代の藤原氏(九条流・小野宮流)
第13講 源氏
第14講 平氏
第15講 奥州藤原氏

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