« 『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』 | Main | The lonely Century (邦訳『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』) »

November 10, 2021

『解剖 日本維新の会』

Ishin-toyo-keizai

『解剖 日本維新の会 大阪発「新型政党」の軌跡 』塩田潮、平凡社新書

 今回の総選挙での維新の4倍増、大阪小選挙区での全勝には本当に驚きました。

 橋下代表の登場以来、維新は「勘弁してくれ」という感じでしたが、こうした圧倒的な結果を示されると、ぼくの見ていなかったものがあるとしか思えません。

 41議席(30増)には驚いたし、それよりも比例得票数には驚愕しました。

自民 19,914,883
立憲 11,491,737
維新  8,050,830
公明  7,114,282
共産  4,166,076
国民  2,593,203
れいわ 2,215,648
社民  1,018,588

 「現実の方が間違っている」という自称リベラルのような観念論者にはなりたくないので、『解剖 日本維新の会』塩田潮、平凡社新書を読んで勉強することにしました。表看板の大阪都構想で住民投票に二度失敗するなどしながらも生き延び、第三極として台頭てきたのは何かあるのかな、と(「小選挙区比例代表並立制」という今の選挙制度に一番、適合しているのが維新なのかもしれませんが)。

 『解剖 日本維新の会』によると橋下・維新が大阪の改革を目指したのはバブル崩壊による法人税収入が落ち込んでいるにも関わらず、公務員天国が改善されず、退職金を二重取りできる出資法人は79もあったからだ、としています。ノックも知事時代にもそれなりに取り組んだけど強制猥褻で辞任、その後の太田はやる気ナッシングで一向に進まず、昔ながらの区割りで家業化できてる地方議員も既得権益を守るだけで、現・松井代表はなんとかしなければならないと思った、と。

 大阪の財政問題はこうまとめられています(以下、kはkindleの位置番号)。

《大阪府はバブル崩壊による法人税収の落ち込みなどが影響して、中川和雄知事の時代の一九九三年に地方交付税の交付団体に転落した。次の横山ノック知事の時代の九八年、財政再建プログラムを策定して支出削減に努力した。それでも財源不足をカバーできず、将来の地方債返済の財源となる「減債基金」からの借り入れに頼らざるをえなかった。
二〇〇〇年二月にノックの後に太田房江知事が登場する。太田の後任の橋下は、〇八年の知事選で「大阪府は破綻会社」と強調し、就任直後の記者会見で真っ先に財政非常事態宣言を表明した》(k.425)と。

 また、石原都知事との連携も当時は野合だと感じたんですが《東京都は石原知事時代の二〇〇六(平成十八) 年四月から、従来の単式簿記・現金主義会計の官庁会計に、複式簿記・発生主義会計の考え方を取り入れた新しい公会計制度を導入した。橋下は手本にと思い、教えを請う》(k.1018)という背景もあったようです。

 橋下が立候補したのは《納めた税金が既得権益のところばかりに行くのを改めなければ、という思いで手を挙げた》(k.409)からだ、と。

 個人的には橋下・維新には拒絶反応が最初にきてしまっていたんですが、今回、この本を読んでみて、改めてその理由が分かりました。それは12年11月に石原元東京都知事らと一緒になった影響で極右団体のように感じたからです。

 個人的には一番気になる九条を含む憲法問題についても《「占領憲法打破」は、石原が「譲れない一線」と一貫して唱えてきた路線であった。維新も憲法改正には前向きだったが、理念や方向性では距離があった》(k.1068)《「必要があれば変える。いいところは残す」と唱える改憲容認派の片山はインタビューで、「われわれは、今、九条を変えるのは反対。緊急事態条項も現状では要らないと主張」》(k.1445)というのはホッとしました。少なくとも九条廃止のゴリゴリの右翼ではないな、と認識を新たにしました。

 また、BSでは、松井代表が維新が圧倒的に大阪で強く、自民党を小選挙区で全敗させた理由について「高校無償化、塾通いへの補助、子どものワンコイン診療というベーシック・サービスを実現したからだ」と語っていたんですが、これには不意を突かれました。

 そこでTwitterで大阪の有権者に《大阪で維新が強いのは「高校無償化、塾通いへの補助、子どものワンコイン診療というベーシック・サービスを実現したからだ」というのは実感として正しいのでしょうか?》と聞いてみたら、8割がYES、2割がNOという回答をいただきました。

 もちろん、ささやかな範囲でのアンケートですが、それでも、思ったよりYESが多かったな、という印象です。これが実質本当ならあれだけ大阪で強いのは理解できます。

 松井代表もこうしたベーシックサービスの成果について《大阪は、年収一〇〇〇万円を超える家庭を除いて、私立高校も全部、教育費を無償にしました。それで、選挙なんかで、若い高校生とか大学生から、『おかげで私学に通えて大学に行けた』『私、行きたい学校に行けてんや』と言われることがありますが、それが一番うれしい。子供なりに選択肢が増えて、喜んでくれているところがあります》(k.2153)としています。


 また、BSの討論番組によると、維新は自民党府議団を割った時は6名からスタートしたが、現在では地方議員だけで260人に達しているとのこと。維新の主張は歳費削減、議員が領収書不要で得られることから第二の給与と言われる文通費(文書通信交通滞在費)の削減、企業・団体献金の禁止というのはスジが通っていると思いました。

 また「資本主義だから格差は出るし、全てをなくすことは難しいというか解消は無理。しかし、固定化されるのはマズイ」というのが橋下の主張。

 ベーシックインカムの予算規模は30兆円を想定しているとのこと。

 選挙結果に驚き、改めて勉強した経験は小泉政権が郵政選挙で圧勝した時に「一度、清和会を岸、福田から辿ってみよう」と思った時以来です。

 国政選挙ではこれまで社会党、民主党、立憲民主党という野党第一党しか投票しておらず、今後も与党には投票するつもりはないのですが、大衆にこれだけ支持を受けているのには、それなりの理由があるはずで、吉本隆明さんの大衆の原像ではありません、そうしたものは確認しなければ、と思ったからです。

 また、子どもの頃から日本の政治をみてきた目からすると、日本では旧民社党のような中道左派は中途半端で大衆受けせず、自民党か社会党に結局、票は入るという図式がもしかしたら崩れたかもしれないと今回の選挙では感じました。それは国民民主党の増加です。

 今回、旧社会党な追求手法を得意としていた民主党の議員は軒並み苦戦し、実際にスキャンダルを起こした与党の議員もキッチリ選挙の洗礼を受けたわけで、国会ましてや予算委員会ではキチンと政策論議をやってくれ、という要求が高まっているとも感じました。

 また、実質、橋下元代表が維新のリーダーというのは変わっていないようです。《引退後、維新の法律政策顧問という立場で党外から支援する形となった橋下は、維新の党運営や政策策定などにどう関わったのか。
「党の大きな方針や政策を決める戦略会議というのがあるが、必ず出席する。というよりも、橋下さんに合わせて開いている。そこで議論を主導されている。みんなで決めるわけだけど、今も一番、影響力がありますよ」
維新の共同代表を務める片山虎之助は一六年五月、インタビューに答え、党内で重要な政策を決定する場面で、引退後も影響を及ぼす橋下の存在と役割を明かした》(k.1525)。

 単なる自民党の補完勢力と思っていましたが、もし《維新は与党ですか、野党ですかとよく聞かれます。私は地方議会の出身ですが、地方自治は首長と議員が別々の選挙で直接、住民から選ばれる『二元代表制』です。首長が出してくる議案に、必要なら賛成し、おかしければ修正をかけ、間違っていれば反対する。有権者が政党に求めている役割はそれだと思います》(k.2440)というのは本当ならば、もっと注目していかなければならないと思います。

|

« 『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』 | Main | The lonely Century (邦訳『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』) »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




« 『荘園 墾田永年私財法から応仁の乱まで』 | Main | The lonely Century (邦訳『THE LONELY CENTURY なぜ私たちは「孤独」なのか』) »