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February 22, 2021

『アメリカ大統領選』久保文明、金成隆一、岩波新書

America-president-election

 こっちに載せるを忘れていたので…。

 米国の下院の任期は2年、大統領は4年、上院は6年。

 大統領選と同時に行われる下院ではだいたい大統領に選出された方が勝つけど、三権分立が厳く、大統領選挙で掲げたた公約はたいがい実現できないので中間選挙では負け、二期目の中間選挙でかなりの確率で負ける、と書かれています。トランプ陣営というか、共和党の幹部はここら辺を睨んで粘ったのかと思いましたが、最終的にやりすぎと判断されてジョージアで二議席をスイープされてしまったのは意外でした。分割政府の法案通過率はクリントン時代でも36.2%だったそうで(p.26-)、それを狙っていたんでしょうが、最後は自爆してしまいました。

 この本は一部が久保文明教授による大統領選挙の概説。二部と三部が『トランプ王国』の金成隆一記者による予備選、本戦のルポとスティーブン・レビツキー教授のインタビュー。四部が再び久保教授によるトランプ政権の評価という構成。

 印象的だったのはレビツキー教授のインタビュー。

 クリントンが当選した当時、有権者の73%が白人キリスト教徒でしたが、オバマ再選時はこれが57%まで落ち、2024年には50%を割る、と。《私は、これが政治的な激震の主因だと考えています。アメリカで白人キリスト教徒が、その支配的な地位を失うという移行(transition)です。私は、このような移行を経験した民主主義(国家)を他に知りません》(p.187)というのは重要な指摘だな、と。

 民主党は特別代議員というエリート(ゲートキーパー)が大統領候補を選ぶ際に大きな役割を果たしていますが《共和党の場合は純粋な民主的なシステム》で、門番の役割が弱まったのでトランプが選出された、と(p.182-)。

 圧倒的不利と言われたヒラリーとの大統領選挙で勝ち、再選に失敗したとはいえコロナの責任を問われる中、過去のどの職大統領を獲得したことのない7260万票を集めたという熱狂の背景には、トランプは自分たちの手で選んだんだ、という参加者意識があったのかな、と改めて感じます(単純にトランプを批判する人たちは、ここら辺は全く分からないんだろうな、とも)。

 スティーブン・レビツキー(Steven Levitsky)は『民主主義の死に方:二極化する政治が招く独裁への道』の共著があるけど、Audibleで聴くのはこの"How Democracies Die What History Reveals About Our Future" (with Daniel Ziblatt)にしようかなと考えています。

 大統領選挙の当日、トランプが優勢で開票が進む中、ほとんど勝利宣言をしたような時間帯は銀座で飲んでいました。その時、商社マンたちが止まり木で飲んでいて、PCなんかを見ながら盛り上がっていたんですが、中西部の速報を見て「これはトランプ勝ったな」とMAGAキャップを出して嬉しそうに記念写真を撮っていました。あまり語られない風景ですが、忘れがたかったので書いておきます。本の帯は「4年に1度、政治を変える」でしたが、「4年に1度、世界を変える」だな、と改めて感じます。

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