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October 20, 2020

『古代史講義【宮都篇】』佐藤信、ちくま新書

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 加藤陽子先生曰く「講義」本を早くから揃えてきたちくま新書ですが、古代史講義は【邪馬台国から平安時代まで】と【戦乱篇】に続く三冊目。

 「はじめに」で《大王の代替わりごとに大王宮が移転した時代には、王位を継承した新大王の皇子宮が新たに大王宮となった。七世紀に入って飛鳥に大王宮が集中するようになると、飛鳥の地に国家的施設が集中し、また大王宮と国家的大寺院がセットで営まれるようになる。そして、中国の都城にならって藤原宮(649-710)が営まれると、天皇の住む内裏や政庁かせ位置する宮の周りに条坊制をもつ京が置かれ、天皇の膝元に王族・貴族・官人が集住するようになった》とまとめられています。

 以下、基本、章ごとに。

 かつては代替わりごとに宮を移すと考えられていたが、飛鳥宮では同一の場所に宮が造営され続けるなど、従来の考え方は再検討を迫られている、と。飛鳥板葺宮の造営では全国から材木を調達したが、既に大化改新以前に地域ごとに労働者を動員する体制は整っていたとのこと(飛鳥の宮々)。

 上町台地北端は大阪城が建てられたが、古代から流通や支配、外交の拠点であり、そこに難波宮が建てられ、奈良時代でも都の機能を引きうけられるほど充実していた(難波宮)。

 白村江の戦いを指揮した唐の武将、劉仁願が664年に郭務宗を派遣してきたものの、入京を拒んだが、翌年、再び来航すると宴会を開いて遇し、遣唐使も送るなど動きが急になり、第3次高句麗討伐の命が下ると高句麗から使者が来るなど大津宮は白村江の戦いと切っても切れない関係にあった、と(大津宮)。

 倭国では、大王・天皇の代替わりごとに王宮が移動する「歴代遷都」だったが、礎石の上に瓦葺で建てられた藤原宮は恒久的な王宮として造営され、官人には宅地が与えられた。また、新元号「日本」を認めてもらうための遣唐使もここから出発した(藤原宮)。

 しかし、遣唐使の帰国で長安の様子が伝えられると藤原宮の造営は中止され、平城宮が造営されるが、739年の天然痘の流行、藤原不比等の四人の息子の死亡などにより、恭仁宮・難波宮・紫香楽宮へと遷都が相次ぐ。これは唐が三都制をとったことに習ったものと考えられる(平城宮)。

 恭仁宮時代には墾田永年私財法が発布される(恭仁宮)。

 紫香楽宮は大仏建立とのセットで考えられていた(紫香楽宮)。

 渡来系の桓武天皇は新皇統の樹立を示すために長岡京に遷都した(長岡京)

 平安宮では大極殿が不要になるほど、政務が略式化された。また、当時は宮仕えの若い女は、病気になると主人の家から追い出され、路頭に遺棄された(p.207)。

 十世紀以降、国司となって赴任する者を受領と呼んだが、蓄財に余念のない受領層に目をつけ、造営させて、その成功報酬として官位を与える方式を定着させたのが院政期(p.237)。

 太宰府は都や難波を除けば地方最大の都市だった(p.255)。

 多賀城は荘厳な行政府で軍事的要素は虚飾(p.261)。

 平泉は京都や鎌倉とは別の仏教色豊かな政治都市としての新たな展開を示す可能性があった(p.295)。

【目次】
1.飛鳥の宮々──大王宮から飛鳥宮へ 鶴見泰寿
2.難波宮──改新政権の宮と天平の都 磐下徹
3.大津宮──滋賀の都の実像 古市晃
4.藤原京──中国式都城の受容 市大樹
5.平城宮──古代王宮の実像 山本祥隆
6.平城京──奈良の都の特質 佐藤信
7.恭仁京──天平の新京造営 増渕徹
8.紫香楽宮──聖武天皇の夢の都 北村安裕
9.長岡京──新都造営の実像 國下多美樹
10.平安宮──千年の都の形成 北康宏
11.平安京──都市の発展と貴族邸宅の展開 西山良平
12.白河・鳥羽──古代宮都の変貌 土橋誠
13.大宰府──対外交渉の拠点 杉原敏之
14.多賀城──城柵国府と街並み 古川一明
15.平泉──奥州藤原氏の首都 佐藤嘉広

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