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June 24, 2020

『陰謀の日本中世史』呉座勇一、角川新書

Goza-inbou

 呉座先生の『応仁の乱』と亀田俊和先生の『観応の擾乱』のアンチョコというかダイジェストというか要点整理をしてもらった感じ。どうしても、アマチュア日本中世史愛好家は固有名詞を追うだけで精いっぱいになるし、しかも名前の読み方も難しいので、ありがたかった。

 『応仁の乱』は畠山氏の家督争いを発端にした細川勝元と山名宗全の権力闘争で、義政の弟である足利義視が東から西に移ったことなどは二次的な問題であり、東軍勝利ということで居場所を失い、美濃に落ちのびただけ、というのを理解すれば、その後の展開もスッととける感じ。

 義視は美濃に留まり続け、そのうち義政の子である9代将軍の義尚が早世。これによって日野富子の妹である良子との子、足利義稙が10代将軍になるも、細川政元と対立して将軍を廃される、と。この明応の政変の後、堀越公方となった足利政知(あしかが・まさとも=義政、義視の異母兄弟)の子が11代将軍の義澄となるが、盛り返した義稙によって京都を追放されて悶死、と。さらに、堀川公方となった茶々丸は伊勢宗瑞後の(北条早雲)によって滅ぼされ、本格的な戦国時代が到来する、みたいな流れ。

 よく、応仁の乱が長引いたのは日野富子のせいだと言われますが、それは富子を悪女に描いた『応仁記』の影響というのも納得的。軍記物語である『応仁記』は細川家の対立を解消するための怪文書だったという解説も素晴らしい。

 それにしても、当時の人物相関図を理解する際には家系図の他、誰が乳母、乳父だったのかを考えなければならないたけで複雑さが増すのに、『応仁記』で活躍して細川家と畠山家が恩讐を乗り越えるキッカケをつくるのが安富元綱と衆道関係にあった神保長誠の子、慶宗が同じ陣営に属したからということで、ここまでくると本当にわけがわかりません(p.196)。

 『観応の擾乱』でも、足利尊氏は小山、千葉、武田、小笠原氏と比べて家格・血筋で圧倒的に上位ではなく有力御家人にすぎず、尊氏に実力と人望があったから将軍になっただけで、尊氏の子孫が代々武家の棟梁として君臨する根拠は乏しかった、という説明で全体をスッと分からせてくれました(p.144)。

 また、新田家末裔を称する徳川家を正統とする立場から、江戸時代に林家が尊氏を冷酷に描いた、というのもなるほどな、と(p.168)。

 本能寺の変の後《みんながみな人間不信になって身動きできない状況で、がむしゃらに前に飛び出した羽柴秀吉が異常》という評価も面白かった(p.262)

《偽史研究者の原田実氏は「自分の情報収集能力や知的能力に自信のある人ほど、初めて聞く話や、考えもしなかったような話が出てくる本を過大評価してしまう傾向がある」と指摘している》そうですが、拳々服膺しなければと思った次第(p.324)。

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