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June 02, 2020

『刑務所わず。 塀の中では言えないホントの話』堀江貴文、文藝春秋

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 都知事選のマニフェストっぽい本を上梓したタイミングで旧著をkindle unlimitedで、事実上、タダで読ませるという選挙戦術はなかなかだなと思いましたが、あとがきで『刑務所なう。』『刑務所なう。シーズン2』、そして今回の『刑務所わず。』は三冊セットで是非読んでほしい、と書いてあるのが、確かにそうだと思ったので、ご紹介します(ちなにみに「わず」は出所したのでNowではなくWasとなった、という意味だそうです)。 

 にしても、扉で書かれている「人口の4%は受刑者」という数字は、国立大学の大学院の入学者のパーセンテージと同じだと思います(よく入学式で語られます)。なんつうか、きれいな対比だと思います。

 《「バブルは悪だから資本主義に代わる新しいイデオロギーが必要だ」っていう人がいるけど、「ウィルスや細菌は人間には悪だから撲滅しないといけない」ってのと同じ》というコロナ騒ぎの今にも通じる言葉を残しているのはさすがだな、と。

 ホリエモン本人はほとんど検察のフレームアップ(デッチ上げ)で逮捕・起訴されたので自分は悪くないと思っているでしょうし、出所後も収入を得られる算段がついていたからカラッと書いていますが、ざっくり獄中をひとことでいいあらわせば《融通&効率<上下関係」というのが刑務所だが、古い体質の企業とかもそんな感じなのだろうな…きっと》というあたりでしょうか。

 また、最高裁ではほとんど減刑が期待できないから、二審で諦めれば出所した時は30代だったと書いてあるあたりも実感がこもっていましたね(仮釈放が出るのかと疑心暗鬼になって心が潰れそうになるのが最後の試練だ、という話しも初めて聞きましたがリアルです)。

 収監期間中に刑務所行政を担当する法務省の本省の局長にノンキャリがはじめて就任したことについて《一部の局長を除き、検察官が局長ポストを独占しているのってかなり異常事態》という検察批判も相変わらず厳しい(ライブドア事件はニッポン放送の株を買い占めてフジテレビを買収しようとしたのをエスタブリッシュメントたちが危機意識をもって、アウトサイダーのホリエモンたちをささいな証券取引法違反で起訴したフレームアップに近いものだと思っています。約53億円の粉飾決算に対してホリエモンに下された刑は懲役2年6か月でしたかが、山一証券をはじめ数千億単位の粉飾決算を行った過去の事件と比較すると、前例のない重刑ですし、類似の事件と比べても悪質ではありません。その後、フジテレビはキムタク主演で検事の独自捜査がいかに素晴らしいかを描いたドラマをつくって検察=ヒーローと視聴者を洗脳したのですが、勘違いして思い上がった検察官が村中さんをでっち上げて逆に逮捕されたんですから人間万事塞翁が馬なのかもしれませんが)*1。

 さらに刑務所の世界を世間にたとえると《ここでは、面倒くさい人でもシカトできないから。絶対行かなきゃいけない会社で、体育会系の社風で嫌な上司がいるみたいな感じ》だそうです。

 《カラーコンタクトレンズが流行ったのは「オタクが作って、ヤンキーが売るの法則」というあたりもうなった》というのも面白かった。

あとは箇条書きで。

《仕事で一番きつかったのは、年末の福袋作業だ。いかにも中国から運ばれてきたような感じのボロい段ボールに、アディダスやナイキの靴下が詰め込まれている》

《テレビのインタビュアーってバカなんですよね。なんというか、バカな相手にバカなことしか言わないから》これはサッカーメディアに感じていたこと。小さな業界のサッカーメディアはこんなことを続けていて、あっという間に業界規模が縮小しましたが、他山の石としなければ…。

《原発アレルギー層と、納税は嫌だけど社会保障・福祉は充実させろ、自由貿易は嫌だ派の人って、金がどこからか湧いてくると思っているんだろうか? まさか、自給自足で生活するわけにもいかんでしょうに》

 ロケット打上げをめぐって《大学の研究者はポストが確保できて自己満足の研究予算を取ることに執着するとか、なんとも下らない話ばかり。だから、政府補助ってダメなんだよ! 向上心を持ってリスクを取って自分の安定した暮らしとか捨てている奴にしか補助を出しちゃダメ! と思ったりするが、そういう人たちって元から政府の補助とかアテにしないの》というのも実感だろうな。

 《富裕層増税(所得税)って、現実的な実質収入も大して増えない上に、対象者はほとんどオーナー社長とかだから、役員報酬を基準額以下に引き下げて会社に内部留保するだけだと思うんだよね。実際、法人税額と比較して有利な額以上の報酬を受け取らないのは普通の節税対策だから。富裕層以外の人に向けた単なるポピュリズム政策の末路は、ほとんど税収が増えず、富裕層の節税や海外脱出を助長し、経済は冷え込むという最悪の結果を生む》というのも、まあ、その通りだなと。

 《真相解明や再発防止には、関係者を刑事免責扱いにして、洗いざらい調査委員会に語らせること。でないと、刑事処分を恐れて肝心な所を関係者は話さないし、当局は勝手なストーリーをでっち上げる癖があるから》という指摘は大切。

 ホリエモンは「ようやくサンピン(刑期残り3分の1)まで来た!」と喜んだが、最近ではよほどのことがない限り、刑期を1/3残した状態では仮出所はできないらしい。じっさい、ホリエモンも出獄できたのはヨンピンの後。

 ごはんとおやつで得した気分になる「幸せの閾値が低い受刑者」となったことを自覚するというのは可愛いし、人間の本質だろうな、と。

 《この世に「安心・安全」などないし、自分の身は自分で勉強して守れ。ジェットスキーに乗るのに免許がないと罰せられる国って、日本くらいのものだよ~。バカバカしい》というのも、その通りだな、と。

*1ノンキャリの元刑務看守だった西田博さんが2013年に法務省矯正局長に就任。検察官ポストだった矯正局長ポストに初めてノンキャリが就任(とはいっても77年中央大学法学部卒ですか)。西田氏の後任は再び検察官が就いています。ちなみに2人は文藝春秋で2015年4月号で対談しています。

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