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December 01, 2019

『日本史の謎は「地形」で解ける「環境・民族篇』竹村公太郎

Takemura-3

 元、旧建の河川局長、竹村公太郎さんの『日本史の謎は「地形」で解ける』シリーズの三冊目。

 さすがにネタ切れ感はあるけど、小麦・大麦が土地を疲弊させ原因はリン不足というあたりからの渡り鳥の話しにもっていく呼吸は大したもの。

 土地の疲弊はヨーロッパの小麦・大麦文化圏の問題点として指摘されているけど、稲作の場合、肥料となるリンは鳥の落とし物として蓄えられるから疲弊が少ないのか、と。しかも、リン鉱石は鳥の落とし物の化石だというのも驚きました。

 日本の農業が下肥の循環に支えられていたのも人と鳥の違いはあれ同じ構造。米中もリン鉱石の輸出制限をかける中、日本列島には渡り鳥による生きた落とし物のリン鉱脈がある、というのは面白かった。

 『星逢一夜』という作品は渋川春海が保科正之の元で研究した貞享暦の改暦が物語のベースにしていますが、会津藩主、保科正之は二代将軍秀忠の庶子で家光の弟で、四代将軍家綱の後見もつとめていたのか、というところまでは思い至らず。

 しかも、振袖火事で焼け野原となった江戸の再建で、それまで北の守りの最終防衛ラインとなっていた隅田川に防災のために両国橋をかけるとか、主要道路の拡幅、広小路の建設などの資金を捻出するために、天守閣を再建しない決断を下したのも保科正之だったとは知りませんでした。

 大阪は五十日に道路が東京などよりも混む。その訳は、五十日に取引先の顔を見に行くことで、商売のリスクマネージメントをしているから、というあたりも面白かった。

 廃藩置県で大名が版籍奉還したのは、自分のアイデンティティーは母親が住う江戸で、百姓が時には一揆を起こすような自領ではなかったので軽く捨てたと言われているけど、殿様たちは考えてみれば、ほとんど妻が人質となっている江戸の生まれ。ということは、友人の大名も江戸生まれ。まあ、地方は江戸と比べて娯楽なども少ないし、一極集中の弊害とかいっても、そういうことは今始まったことじゃないな、と。

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