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June 01, 2019

『囲碁 こういう人は上達しにくい 《限られた時間で強くなる考え方》 』内田知見

 

Go-tsuyoi

 ザル碁ですが、囲碁は学生時代から打っていまして、棋譜を並べたりするのも好きでしたが、初段ぐらいからは上達しませんでした。

 「まあ、こんなもんが実力だろう」と思っていたんですが、この本を読んでハッとしたのが《囲碁で遊んだ時間は、囲碁の勉強時間には含みません》という箇所。囲碁はとてつもなく面白いので、いったんハマると勉強してすぐ初段ぐらいになってしまいます。けれども、そこから都道府県代表大会に出るようなクラスに、どう勉強してなったらいいのかは、独学ではわからず、勉強することを放棄していたんですね(まあ、他に面白いこともいっぱいありましたし…)。

 この本は、囲碁が上達する=囲碁が強くなると定義して、そのためには中盤で相手の弱点を発見し、そこを攻めることで有利を拡大して勝利する、という戦略で効率的な勉強方法を提案しています。

 細かな勉強方法は省きますが、以下の強調点は様々な分野にも応用できるのではないかと考えました(kindleで読んだので頁数は省き、また、多少アレンジしています)。

・大切なのは「勉強時間」で、勉強時間とは「勝つための訓練」
・強さは相対的なもので、勝つことによって強さを示すことができる
・序盤の布石は重要ではないので時間を使わず、布石を固定化した方が実戦では有利(黒番なら中国流、白番なら向かい小目などで10-20手を暗記してしまう。あるいはスミは33に打ってしまう)
・重要なのは中盤の手筋のトレーニング。勝つチャンスというは、勝つための手筋がある局面。そこでは非常に大きな得が生まれる。死活よりも手筋のトレーニングの方が優先度は高い
・終盤はハイリスク・ハイリターンな手は残っていない。中盤の戦闘時にハイリスク・ハイリターンな手がたくさん存在するから、中盤の形勢判断が重要
・中盤で「手になりそうなところ」に突っ込んでいって手にする「破壊力」こそアマチュアレベルの強さ

 ハッとしたのは、囲碁の上達は勝つことにあり、強さは相対的なもの、というクリアカットな考え方です。

 どんな世界でも上達とは勝つことで、そこに絶対的な意味はないけれど、相対な評価でしかランク付けはできないというのは「ナンバーワンにならなくてもオンリーワンでいい」みたいな言い方よりも遥かに使える局面は多いだろうなと思います。

 個人的なことを言えば、囲碁は1)友人や親戚の人たちの性格が分かる2)棋譜を並べて芸術的な一手に感動できる3)アルファ碁のようにテクノロジーの進化を実感できた-という素晴らしいエンターテイメントをぼくに与えてくれました。

 ゲームによって性格を判断するという場合、例えば麻雀など運不運に左右されるようなゲームでは、その人のダークな側面が浮かび上がるような気がします。また、将棋など盤面が狭く目的が相手玉を詰ませるというハッキリしすぎるゲームでは、強さだけが際立って性格まではわからない感じ。囲碁はその点、相手の良い面(辛抱強い、意外と積極的、粘り腰がある、大局が読めるなど)が見えてくる感じがしました。

 ぼくは教えてもらった師匠から「プロになるわけではないのだから、上品に打つことを心がけなさい」と言われ、布石では高川格先生の「星打ち」だけを勉強するようにと言われ、その通りやってきました。ゲームでは勝負にこだわるタイプではないので、それで十分というか、そういう性格を見抜いた上でのアドバイスだったのかな、と今となっては思いますが、以後、数十年、星打ちで序盤は固く打って模様を張り、相手が攻めてきたら、そこで戦って勝負という碁を打ってきました。ヨセが苦手というか覚えるのが面倒だったということもあり、中押しで決まることが多く「なかなかスジがいいね」と言ってもらえれば十分、という感じでした。

 この本を読んで「戦わない人も伸び悩む」「勝てる局面でも戦闘を起こさないからチャンスを逃すのでは強くなれない」というあたりは、まるで自分の棋譜を見られたような気さえしまた。

 この本では中盤の局面で、大きいリターンが期待できる手を打って戦闘に勝利することで勝つことを眼目にしていますが、もちろん勝てるかどうかわからない局面では戦わないことを勧めています。

 《勝つために戦う。勝つために戦わない。それを選択できること》が重要だ、と。

 ここ数年、朝は詰碁を4問解いて頭を起こすことにしているんですが、この程度の「勉強」で

 これはどんな世界にも応用できるかな、と思います。も、なんにもしなかった時よりも、遥かに棋力はついてきたかな、と。 

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