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November 11, 2018

『アリアドネからの糸』

Adriadone

『アリアドネからの糸』中井久夫、みすず書房

 97刊の第3エッセイ集。この時期もまだ、感想を備忘録的にまとめてはいない時期だったのですが、有名になった「いじめの政治学」はあまり印象に残りませんでした。

 これは中井先生自らが学童疎開でいじめられ、60歳を過ぎてからもトラウマに悩まされるというような体験を持っていないのと、今の時代のいじめはぼくたちが子どもの頃にあったようないじめとは質が違っていると感じたからなのかな、と。

 「いじめの政治学」によると、いじめには三段階があるとしています。それは孤立化、無力化、無価値化。

 まず加害者は被害者の身体、癖などの些細な差異を指摘して周囲から「孤立化」させる、と。次に被害者は暴力をふるい、抵抗しても無駄であると思い知らせる「無力化」の段階。この結果、被害者は「無価値化」され、自殺に至ってしまうまで追い詰められる、と。

 見事な分析だとは思いますが、そこまで図式化できるのかなと思うのと同時に、今の時代に仄聞するいじめについては、二次性徴の早まりが前思春期で育まれるべき純粋な友情関係を構築する時間を短くしているあたりが(『「昭和」を送る』p.156)、ぼくが子どもの頃のイジメと質が違ってくるのかな、と感じますがどうなんでしょうか。子ども時代の短さ、あるいは無さが深刻さを生んでたりして、と。

 PTSD(心的外傷後ストレス障害)はこのあたりから人口に膾炙してきたのかな。ヴァレリーの詩『若きパルク』への黄金比を用いた建築的考察も印象に残ります。

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