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October 17, 2018

『リスク・オン経済の衝撃』

Lisk_on

『リスク・オン経済の衝撃 日本再生の方程式』松元崇、日本経済新聞出版社

 松元崇さんの本をnoteにまとめておこうと思ったら、これをアップしていないことに気付きました。FBのnoteにはあげていて、複数のに書いておくリスクテイクは大切だな、とw
 
 大蔵官僚出身の元内閣府次官、松元崇著の本ですが、近著である『「持たざる国」からの脱却 日本経済は再生しうるか』(中公文庫)と内容的にダブルところが多いので、簡単に紹介します。

 一番、納得したのが《先進国の中央銀行が新たに行うようになった「最後の買い手」としての業務》を「金融資産管理業務」と名付け、従来の「銀行券発行業務」と共に中央銀行の業務の柱として位置づけたことです。ヘッジ・ファンドなどの暴走によって金融市場の秩序が破壊され、実体経済に悪影響を及ぼすことがないように金融資産を買い入れ、増減をコントロールすることによって安定化を図るのが目的。

 グローバル経済が発達する前は、「銀行券発行業務」を運用することによってインフレを防止することが中央銀行の役割でしたが、発展途上国からの安価な製品の輸入によるデフレ圧力が加わった現在、新たに「金融資産管理業務」が必要になった、と。

 経済が好調さを取り戻し、中央銀行の放出する資産がヘッジ・ファンドに購入されていけば、マーケットに悪い影響を及ぼすことはない、と(出口戦略)。

 日本でもプラザ合意後、投資が期待されたような収益を生まなくなり、やがてバブルも崩壊し、地価と株価の下落スパイラルがとまらなくなりました。日本ではBIS規制も導入されたばかりだったので、銀行の貸し渋り、貸しはがしが行われるようになりましたが、今から振り返れば米FRBのような非伝統的な金融政策を断行すべきであった、と。

 当時恐れられていたのがインフレ懸念。しかし、ヘッジ・ファンドと同じように中央銀行が金融資産を買い入れたからといってインフレにならないことは、戦時中の日本銀行による国債の直接引き受けがハイパー・インフレを引き起こしたという誤った歴史認識によるものだった、と。敗戦直後のハイパー・インフレは米軍の絨毯爆撃によって生産設備が潰滅し、通貨と現物の需給関係が乖離したためで、有名なドイツのハイパー・インフレも戦後5年目にフランスとベルギーがルールを占領したことに対抗してゼネストが行われ、それによって生産がマヒしたためだった。

 実際、ドイツも第一次大戦直後は、激しい戦場がドイツ外だったので戦禍を受けず、物の供給がすぐに回復していた(ヒトラーによる速やかな再軍備が可能になった理由もこれ)。日本でもインフレが起こったのは軍票を大量発行した占領地域だけだった。

 こうして米FRBは日本のバブル崩壊を参考に、「銀行券発行業務」については市場との対話を進めるとともに、非伝統的な「資産管理業務」を新たに組み入れ、実行しました。

 しかし、日本にとって不幸なことに、リーマン・ショックによる日本の損失額は欧米と比べて極めて軽微だったために「金融資産管理業務」を行うタイミングが遅れ、それによって円の独歩高となり、企業の海外移転という最悪の結果を招くことになてしまいました。それは一国のファンダメンタルズに基づかない為替の変動が、ファンダメンタルズに大きな影響を与えることになった時代を象徴しており、42%も対円で下落した韓国ウォンの前に日本の電機メーカーはなすすべを失い、国土の均衡ある発展を目指して整備された地方の工場が閉鎖された、と。

 さらに、リーマンショック前の02~08年(小泉首相時代)は低いながらも日本経済は成長していたが、国内での賃上げは見送られ、消費拡大には結びつかなかった。

 黒田日銀は非伝統的な対策を果敢に打って出ているが、それは日銀DNA。

 第一次大戦期に日本経済は飛躍的に拡大し、貿易は4倍、工業生産高は5倍、GNPは3倍になったが、その反動恐慌に救済融資を実施。設立時にも通貨の制限外発行を認められるなど柔軟な体制だった。

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