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March 08, 2018

『脳の意識 機械の意識』

Nou_no_ekai

『脳の意識 機械の意識』渡辺正峰、中公新書

 なかなかスッキリ理解できないので、読んだままにしていたけど、このままにしておくと、さらに忘れるだけだと思い、書いてみます。

 この本は「意識の移植が確立し、機械の中で第二の人生を送ることが可能になるのはほぼ間違いない」ということを言いたいために書かれ、その手法は左右の脳半球を外科的に分離して、片側に電算機を接続することだということで話題になりました。

 正直、そこまで来たのか、と。

 ただ、一読、ぼくのような素人が読んで、その驚きを縦横に味わえるかというと疑問。

 本書の前半はクオリアって凄い!ってことで、意識はクオリアがあることで担保されるみたいな言い方。しかし、そのクオリアも知覚がそのまま反映されるのではなく、脳が造り出したものであるということを、様々な錯視の例をあげながら説明します。

 中盤では、その意識がどこで発生しているかを脳の操作実験で探究していくわけですが、研究途中の課題のためか、とても整理されているとはいえないし、結論も出ていないが、意識の存在場所として提唱するのは情報ではなく、アルゴリズムという感じ。

 終盤はいきなり、意識の機械への移植が確立し、機械の中で第二の人生を送ることが可能になるなるのはほぼ間違いないという主張のもと(脳科学は発展途上段階だから言ったもん勝ち、という感じで)、左右の脳半球を外科的に分離して、片側に電算機を接続することで二段階に分けて意識をコンピュータに移植することが可能だという手順が示されます。

 クリックの「あなたはニューロンの塊にすぎない」という言葉を噛みしめるべきというあたりは、なるほどな、と。感覚意識体験は原始的だが本質を全て内包しており、脳も所詮は電気回路にすぎないのに、なぜ脳を持つものだけにクオリアが生起するのか、という問いかけは新鮮でした。

 コンピュータには未来永劫実装され得ないと考えられる人もいる「クオリア」ですが、哲学と科学のあいだをさまよっていた意識を科学のまな板に乗せ、意識の自然則を解き明かそうという実験が日々行われていることの重さを実感します。

 といいますか、脳のどこにもブラックボックス(未知の仕組み)が隠されていないのに意識が宿ることが衝撃です。単に電気の流れ。

 だから機械の意識をテストする手法を示し、機械への意識の移植を見据えることができ、情報が意識を生むのだ、と。

 単なる電気の流れということでは、有名なリベットの自由意識の問題(行動の0.5秒前に実は意思されている)が、シナプスの発火量に原因があったということを知ったのが、この本で得た最大の知見です(p.146)。つまり、ある閾値に達して意思するには時間がかかるけど、その前にしばし行動が先んじる、と。

 これは別の本で読んだことですが、老人の痴漢は、対象を知覚して行動を起こしたしまったのを中断させるという決定が遅れるために発生するとか。

 とにかくセンス・オブ・ワンダーは感じさせてもらえました。

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