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December 28, 2017

『享徳の乱』

Kyoutoku
『享徳の乱』峰岸純夫、講談社選書メチエ

 ちょっと読みにくかったけど、三章から面白くなってきた。関東の大乱で都の寺社が所有する荘園が、在地領主の年貢未進で不知行化。武士でも遠くに散在している所領は失われるが、本領を中心とした一円所領化が進展し、結果的に兵農分離も進む、という構図が見えたから。

 とはいっても亀田俊和さんによると、寺社は遠方にある荘園を年貢の半分を与えるというような条件で経営していたということらしいんですが。

 また、豊島、太田、千葉、佐野、小山、宇都宮、那須、里見など現代にも続く地名は、当時の有力氏族の名字からとられたんだな、と。関東の場合、室町時代から、それまでの寺社の荘園という無名の地から、「戦国領主」が治める本当の歴史が始まったみたいな。

 応仁の乱は、享徳の乱を収拾できない義政・忠勝に、上野経営を通じて関東の情勢に詳しい宗全が和議を進言したのに聞き入れられず、衝突したのではないか、みたいなみたて(p.112)。京都在住で在地に問題を抱える大名家にも亀裂が入って、ということで…この後は下克上の世の中になっていくわけですが、太田道灌みたいに優秀だと主君に殺されたりして。

 鎌倉時代から続いた上部権力に頼ることができなくなった国衆は、実力を持って所領を支配、経営するようになり、世界に誇る封建領主たる戦国大名が誕生する、というわけですが、享徳の乱から戦国の終わりを画する小田原攻めまで140年なんですよね。

 この間、国衆が政治倫理を磨き、経営能力も高め、領民たる農民を保護していったわけですから、日本人の「お上」を信用する意識というのは長い歴史を持って射るんだな、と。

 江戸時代も農民は士農工商で二番目の地位だったわけですが、ロシアとかスウェーデンとか農民は君主の言いなりで兵隊にとられたりする農奴ですからね。

 明治維新では自らの特権を捨てて四民平等を形の上では整えたわけだし、太平洋戦争の一時期だけは酷かったけど、まあ、冷静に考えたら今につながる日本の歴史が始まった室町時代以降、政治はそう悪くなかったのかもしれないのかな、と。

 《旧約聖書(レビ記)によれば、西欧古代において人間の罪業の身代わりに選んだ山羊に罪を着せて荒野に放つことがおこなわれ》とあるのにはガッカリ。旧約が成立したユダヤの地はオリエント(p.61)。講談社メチエの編集者も訂正してあげればいいのに…。

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