『サッドヒルを掘り返せ』
東京国際映画祭の出品作品『サッドヒルを掘り返せ』は最高でした。
『サッドヒルを掘り返せ』はセルジオ・レオーネの映画史に残る傑作『続・夕陽のガンマン』(The Good, the Bad and the Ugly「善玉、悪玉、卑劣漢」)の、あまりにも有名なラストの決闘シーンが撮られた墓場(サッドヒル)のセットが、スペインの荒野に荒廃するがままになっているのを、映画ファンたちが復元しようという試みを描いたドキュメント。
サッドヒルは映画のセットなので、土に埋もれた墓場を掘り返しても何も出できません。しかし、何も出てこないところを掘り返して、埋もれてしまった円形の闘技場のような石畳を見たいという無から有を生むプロジェクトが映画的だな、と。
『サッドヒルを掘り返せ』の監督、プロデューサーのトークセッションでも、最初はYoutubeにでもアップできればということでスタートしたプロジェクトが、どんどん大きくなって、『続・夕陽のガンマン』マニアのメタリカのジェイムズ(コンサートのオープニングはいつも『続・夕陽のガンマン』のサッドヒルの場面)や、イーストウッド本人まで登場する作品になったと語っていました。
それも、これもサッドヒルを復元したいというコケの一念がSNSなどを通じてどんどん広がり、人手や資金が集まっていきます。
しかもこのセットはフランコ政権最後の時代に、軍隊まで動員して作られたという裏話も広がっていきます。
改めて驚いたのは『続・夕陽のガンマン』はフランコ政権時代に政府の協力を得て撮られた作品だということ。もう、その部分でも歴史になってる。レオーネ作品は反戦、反ナショナリズムに仕上がっているというのも壮大な皮肉。それも含めて歴史的な作品だな、と。
質問もしちゃったんですが、監督のぼくの質問への答えは「フランコ政権のラスト・ディケイドに『続・夕陽のガンマン』は作られた。政権としては外国から映画を撮りにわざわざスペインに来るのは政治が上手くいってる証拠とPRしていたし、内容が反戦、反ナショナリズムでも外国の話ならOKだった」みたいな感じでした。
それにしても、フランコ政権時にフレッド・ジンネマンが『日曜日には鼠を殺せ』を撮ったのは凄いと改めて感じるし、続・夕陽のガンマン50周年に集まった人々が白人ばかりというのには、ひょっとしてサッドヒルの背景にフランコ時代への郷愁とかあるのかな、なんてことも思ったけど、さすがに聞けなかったw
映画がヨーロッパでは本当に偉大な文化として扱われているし、プロジェクトも聖地巡礼でサッドヒルの墓場のセットの跡地に訪れるファンが多かったというのも驚く。これからは聖地巡礼だけでなく、聖地再構築がコアな映画ファンのトレンドになるかも。プロジェクトメンバーたちの語る「芸術は聖なる体験」という言葉には深く頷く。
無から有を生むのは宗教の始まりというか。
東京国際映画祭では、何年か前に見た『少年トロツキー』が良かったけど、『サッドヒルを掘り返せ』はそれを上回る収穫でしたね。トロツキーもサッドヒルも、こうした機会がなければ見られなかったのでありがたいな、と。残念ながら、コンペ外の作品なので不可能なのですが、もしこうした作品に大賞とか献上すれば、映画祭の価値も上がると思う。そうれば、こうした作品がもっと多くの人の目に触れるようになると思います。
それにしてもブレードランナーをリメイクした監督に、サッドヒルの半分でもオリジナルの映画へのリスペクトがあれば…と。
なお、11/3(金)横浜ブルク13上映『サッドヒルを掘り返せ』(東京国際映画祭共催)ギジェルモ・デ・オリベイラ監督の登壇が決定したそうです。ぜひ!
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