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October 22, 2017

『ナチスの戦争1918-1949 民族と人種の戦い』リ

Natiz_war

『ナチスの戦争1918-1949 民族と人種の戦い』リチャード・ベッセル、大山晶訳、中公新書

 2年前に出て買っただけだったのを、夏場に取り出してきて読んだんですが、まとめていなかったので、備忘録的に。

 ヴェルサイユ条約でポーランド回廊によって切り離された東プロイセンの飛び地では、軍縮のため、国境防衛でナチのSAの協力が不可欠となり、後の国防長官やドイツ・プロテスタント教会の国家主教となるルートヴィヒ・ミューラーなどが出た(p.37)。

 ナチスはイタリアが苦戦したユーゴを征服した後、セルビア人男性は無罪を証明できない限り有罪となり、一人のドイツヒトラー将校が殺された村は破壊された、と(p.146)。

 サッカー国際試合で旧ユーゴ諸国がドイツ戦で見せるガッツはここらあたりから出てきているんだな、みたいな。

 ヒトラーは完全に包囲される前にスターリングラードの10万人の第六軍を脱出させずに6000人しか帰還出来ない大失態を演じたけど、少なくとも、その事実は公表し、ゲッペルスが国民向けの総力戦演説を行ったのは、なんて旧日本軍と違うんだ、と思う(p.178-)。

 ドイツ国民も東部戦線で国防軍が被った莫大な損害を懸念していたという。クリスタルナハトのユダヤ人弾圧も目の当たりにしていた国民はバカじゃないから、薄々、敗北も虐殺も知っていたんだろうな、と(『この世界の片隅で』でも、長粒米を喰っていた主人公たちは知っていたんだろうけど、そこらへんは、やっぱり描かれてはいなかった)。

 日本も本土決戦は避けたのにドイツは最後まで戦い政府所在地が制圧されて降伏。これは現代史上初。第二次世界大戦のドイツの損失の1/4以上は最後の4ヶ月に発生したというのは、ヒトラーの死なば諸共作戦なんだな、と。

 また、ナチスが恐れていたのは第一次世界大戦の敗北につながった18年11月のような兵士の逃亡、内部の革命だったけれども、それはおこらなかった、と(p.214-)。

 しかし《略奪者は撃たれ、それがとくに外国人である場合、NSDAPの地方役人はしきりに大衆にそれを知らせたがった》(p.225)、と。

 カート・ヴォネガットの『スローターハウス5』で、ドレスデン爆撃後に米兵が焼け跡からティーポットを盗んだ罪で処刑されるエピソードはそういうことだったのか、と。

 戦争最末期の《経験は、ドイツ国民にとってあまりに悲惨だったため、この「最後の奮闘」のショックは、ナチ・ドイツの戦争初期の記憶に取って変わった》(p.236)。

 加藤陽子先生が太平洋戦争について指摘していた、沖縄戦、本土爆撃、原爆によって日本人の戦争の記憶が上書きされた、という主張に似ているな、と。

 大戦最末期の経験は被害者意識とないまぜになって《戦後政治の基盤となり、第三帝国での出来事の多くについて沈黙させる基盤となったことは驚くにあたらない》(p.236)。

 ここらあたりも日本と似てる。しかも、日本ではまだ『この世の片隅で』みたいなのがが無批判に受け入れられてるし…。

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