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October 19, 2017

『小説フランス革命』第2部(単行本 10巻 粛清の嵐)

 10巻では、エベールらのサンキュロット急進派が6月に蜂起を起こし、議会からジロンド派を追放するんですが、その矢先、鋭い舌鋒で革命を扇動してきたマラがシャルロット・コルデーに暗殺されてしまいます。シャルロット・コルデーはジロンド派の放った刺客に違いないとサンキュロットたちは激昂。1792年9月の9月虐殺の再来を恐れたサン・ジュストらは、政争に疲れはてたロベスピエールにハッパをかけて公安委員長に就任させ、こうした無秩序な暴力を管理することを目的に恐怖政治の大公安委員会が始まります。

 議会も民衆の蜂起を恐れて自らクビを締めるような「恐怖政治を設置しよう」と宣言するわけで、ひょんなことから歴史はとんでもない方向に動くな、と。

 見方を変えれば、サン・ジュストはエベールらのパリ蜂起を利用、ロベスピエールを担ぎ出して、恐怖政治を実現したわけですが、逆にブルジョワの議員たちも前年9月の虐殺を忘れられず、無秩序な民衆の暴力より、議会による恐怖政治のほうがマシと判断したわけです。

 アベル・ガンスの映画『ナポレオン』で描かれたサン・ジュストは、テルミドールの反動で死刑を宣告され、ロベスピエールと一緒に死ねて嬉しいみたいな感じでした。映画では、サン・ジュストがロベスピエールの肩を抱いて議場から去っていったみたいな場面が描かれていたと思います。逆にロベスピエールは表情も乏しくおどおどと描かれていましたが、フランス革命で最も有名な美男子であるサン・ジュストがこれからの1年、ロベスピエールを引っ張るというか、近松の曽根崎心中で死のう死のうと徳兵衛を誘うお初みたいな感じさえ受けます。ロベスピエールは「精神的な蜂起、道徳的な暴動」「徳の政治」を目指すと観念的な方向に行ってしまうんです。

 と、まあ、色々、想像力を働かせながら詳しくないフランス革命を楽しんでます。

 にしても、10巻の最初の方で、ロベスピエールらが苦労して普通選挙を実現させても庶民の投票率は30%以下だとエベールらが嘆息する場面が出てくるんです。

 キチンと投票行くのはブルジョワばかりで、苛立つ庶民は時々暴れて憂さ晴らし、というのは、フランス革命から230年たっても変わらないな、と感じます。

 また、政治で仲間を増やすにはカネとばかりにサロンに集まったり、派手な飲食で饗応したり、議会では建設的な議論より、敵対勢力潰しの罵り合いばかりというも同じだな、と。

 人間はフランス革命から大規模な共同体での民主主義による政治を実現したんですが、それから悲惨な経験を何回しても変わらないな、と。

 ということですが、ジロンド派の追放、処刑に成功したサン・ジュストらジャコバン派の左派は、まず最左派ともいべき激昂派の排除に乗り出します。革命裁判所の創設目的も9月虐殺みたいなことを扇動されては困る、というわけですし、そこに大衆に人気のあったマラが暗殺され、おそらくジロンド派の差し金だったろう、という予想がついたわけですから。

 食糧事情の悪化が激昂派やエベール派の台頭を許したと判断したサン・ジュストらは、強制的に金持ちの財産を処分して、それを貧困層に再分配しようとします。そうなるとこうした過激派は存在意義を失います。また、エベールはマリー・アントワネットの裁判で母子相姦などの濡れ衣を着せようとして、庶民の怒りも買うようになります。あまりにも下品だ、と。

 さらにサン・ジュストは対外戦争の前線にも出て、補給問題などを解決するなど八面六臂の活躍をみせ、さらにはフランス語の統一かなども目指します。

 エベールらは極端にキリスト教を嫌うのですが、聖人の代わりに暗殺されたマラなどの殉教者、龍を退治する天使の代わりにギロチン(サン・ギヨテーヌ)、神の代わりに理性、聖母マリアさまの代わりに自由の女神を置きかえようとします(p.306)。

 《「懺悔なんかしても無駄だぜ」
 と、エベールは続けた。告白しても、罪なんかなくなりゃしねえ。そんなの、坊さんが拵えた嘘に決まってんじゃねぇか。だいたいが告白するぐらいで許されるんなら、そんな甘い世の中もないってもんだぜ》とジロンド派の処刑に動揺するデムーランの弱さを笑うエベールが印象的。かれらの命も長くはないわけですから(P.252)。

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