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September 12, 2017

ウィトゲンシュタイン『秘密の日記』: 第一次世界大戦と『論理哲学論考』

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ウィトゲンシュタイン『秘密の日記: 第一次世界大戦と『論理哲学論考』ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン、春秋社

 これも読んだだけで放っておいたので、忘れないうちに。

 この本は第一次世界大戦に一人の兵士として参加したウィトゲンシュタインが戦争中に書いた日記というだけでなく、『論理哲学論考』を執筆の舞台裏がどのようなものであったかだけでなく、前線に近い戦場という極限状態の中でウィトゲンシュタインが自分の人間観、宗教観、欲望について、赤裸々に書いています。

 「『人間』ウィトゲンシュタインに対してアンバランスな関心を示すことは、思想家に対するに、彼の書斎を覗くことよりももっぱら御勝手に興味を示すことにも通じかねない」(註、P137 )ですし、ゲイであった彼の官能的生活に重大な要素が隠蔽されているとも思えないのでが、それを本当に赤裸々に書いているのは、ソクラテス以来(もっともプラトンの手によるものですが)なんじゃないでしょうか。

 人間観として面白かったのは、周囲の兵士たちとの断絶。《僕が共にいる人々は、低俗であるというよりは、途方もなく狭量なのだ。このことは、彼らと交際するのをほとんど不可能にする。というのも、彼らは永遠に誤解し続けるのだから》(p.115)。時代も分野も違いますが、こうしたことを正直に告白したのは、丸山眞男もそうだったな、と感じます。

 そして、《よい気分のとき、急に孤独を自覚すると、少し背筋を冷たいものが走る。その心地よさ》(p.77)。などのアフォリズムの切れ味。

 また、《言われないことは、言われえないのだ!》(p.118)という走り書きがあったのには驚きました。『論理哲学論考』の最後の命題の原型が放火の中で思いつかれたとは…

Wovon man nicht sprechen kann, darüber muss man schweigen

 ということで、秘密の日記の横に書かれていた草稿1914-1916も読みました。それは1916年6月からの、ロシア軍によるプルシーロフ攻勢で死と向き合ったハプスブルク家の二重帝国の軍人としてのウィトゲンシュタインが書き残した『論考』の元原稿。大修館版を読むのも久しぶりでしたが、いいな、と。

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