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May 13, 2017

『ロマン派の音楽家たち: 恋と友情と革命の青春譜』

『ロマン派の音楽家たち: 恋と友情と革命の青春譜』中川右介、ちくま新書

 メンデルスゾーン、ショパン、リスト、シューマン、ワーグナーなどロマン派の音楽家たちの交流を中心に、19世紀の音楽の発展を紐解く作品。自分が無知だけなのかもしれないけど、彼らは全員1810年前後の生まれだったとは。ハイドン、モーツァルト、ベートーベン、シューベルトなど、それまでの作曲家の社会的地位は低く、父子直伝の教育で訓練されたのも、誰もなろうとは思わない職業だったという指摘は目から鱗。そういえば、モーツァルトの葬儀も映画『アマデウス』まではいかないまでも質素に行われただけだった。

 それを劇的に上昇させたベートーヴェンで、彼が音楽家を社会から尊敬される存在にした、と。その流れに乗って一般家庭の子弟からも音楽家が出てきた、というあたりの背景説明は、ここまでクリアカットに書かれると新鮮。

 天才ピアノ少年リストは貴族から奨学金を得てハプスブルグのハンガリー領からウィーンに出てきて師事したのがベートーヴェンの弟子ツェルニーだったとは…。子どもの頃、いやいややらされていたピアノの「ツェルニー」が音楽史の中でやっと位置づけられました。

 いまもツェルニーをやらせるのか知らないけど、ピアノの先生は子どもたちにツェルニーに入らせる時「ベートーヴェンの弟子でリストを教えた人なのよ」ということをぜひ伝えてほしい。そうすれば、あの無味乾燥な練習曲も少しは見方が変わってくると思う。

 1828年までのメンデルスゾーン(19歳~)ショパン(18歳~)シューマン(同)リスト(17歳)作品など、年代ごとに作品が載っていて、こんなに若書きだったのか、と驚く。ショパンがポロネーズ8番をそんなに若い時に書いてるとは…。ショパンはエチュード1-12番を19歳から書き始めているのにも驚く。音楽家は神童が多いから、若書きでも関係ないんだな。

 こうした一年ごとに掲載されている作曲リストを見ると、ショパンはずっとコンスタントに名曲を書いている感じ。その継続性と、逆に爆発力のなさはなんなんだろ。まあ、ピアノ曲ばかりで書きやすかったのかもしれないけど、とにかく自分の強みに特化している。逆ににしてもワーグナーの遅咲きぶり。ベルディにしてもグランドオペラに特化している作曲家は、劇場やオーケストラ、歌手との交渉術なども含めて遅咲きにならざるを得ないのかも。

 クラシックは子どもの頃はいやいや、高校生ぐらいから意識的には聴きはじめたけど、何歳の時の作品とかは意識したことなかった…。ピアノの先生とか優秀な子がいたら「ショパンは17歳の時に葬送行進曲を書いていたのよ」とか教えれば発憤したりするんじゃないかな。

 メンデルスゾーンもショパンもあっけなく死んでしまうし、シューマンは自殺未遂のあと精神病院で死ぬ。いまのリサイタルの原型をつくったのはクララ・シューマンとリストだが、シューマンとクララの結婚生活はたった17年だったというのにも驚く。

 あと、ライプツィヒが音楽史上、こんな重要な都市だったとは。

 ま、それも含めて勝者の歴史なんでしょうが。

 中川さんは、笛とか買わせて業者儲けさせるより、学校で作曲を教えろと書いていたことあったけど、確かに作曲のメソッドとか教えてもらえないから、クラシック音楽の敷居は高く感じるのかもしれない。作曲術が少しでも分かればスコアも、もっとちゃんと読めるだろうし。

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