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May 03, 2017

『ウニはすごい バッタもすごい』

『ウニはすごい バッタもすごい』本川達雄、中公新書

 ゾウの時間 ネズミの時間』の本川先生の近著。

 目からウロコがボロボロ落ちるような話しばかりで、ぼくだけが知らなかったことなんでしょうが、筋肉は引っ張るだけしか出来ないために、伸ばす筋肉と必ずワンセットになっているとか、ヒトデやウニも新口動物で、それは棘皮動物門、半索動物、脊索動物の三つしかなく、我々と近い関係にあるとか、ヒトデがなぜ星形なのは花の多くが5弁であることと関係するなど、ワンダーだらけ。

 筋肉は繊維です。繊維と言えば糸。糸は引っ張れば強く張れますが、押そうとしてもへにゃへにゃになるだけ。このため、お互い引っ張れるよう反対側に縮む筋肉とペアとなって運動ができるようになる、というのはぼくだけが知らないことなんでしょうが、これからも身体を動かす時に意識していこうと思いました(屈筋と伸筋)。

 この本は刺胞動物門、節足動物門、軟体動物門、棘皮動物門、脊索動物門、脊椎動物門と進化の過程をたどって、それぞれの生き物がどういう戦略で生き残ってきたのかを解き明かしてくれます。といいますか、副題に「デザインの生物学」とあるように、各生物がどのように生き残る上での困難に対処するためのデザインを選んできたか、という歴史をビジュアル的に説明してくれます。

 多くある動物門の中で、最も栄えているのは昆虫。昆虫の種は動物の七割、全生物でも半分を占める。これだけ大成功したのは、体が小さいので1)世代交代が早いからどんどん変異を生み出し2)環境変化に弱いので淘汰も早く優れた変異が生じやすく3)行動範囲が狭いので変異が定着しやすい、というまとめはソリッド。

 被子植物(花を付ける植物)も全光合成生物の七割。昆虫との共進化でものすごい多様性が生じた。被子植物は花粉という乾燥に耐えられるものを作って昆虫や風に運んでもらう。めしべに到着したら発芽して、その湿った環境の中で精子がつくられる、というあたりでは植物の世界にも言及していまして、地球は植物と昆虫の世界なのかもしれないと思いました。

 デザインの話しでは、ウニの棘を外して、砂中を移動しやすいように身体を細長くしたのがナマコの先祖だったとは…。動物は胚から原腸が出来る際にそのいり口として原口がつくられるが、ヒトデなど棘皮動物門は成体の口が別の位置に新しくつくられる新口動物で、それは半索動物、脊索動物(我々の仲間)の三つしかなく、親戚関係にあるとか(p.147)。

 ヒトデやウニも我々の仲間なのか、と。道理でんまいわけだ!と膝を打ったわけですが、ナマコを正面から見ると五角形というのは、ウミユリの構成要素と同じ、と。

 ヒトデなど棘皮動物門などが星型をしているのは、働ける腕の数が最も無駄になりにくいのが奇数で五だからなんだそうです。花も五弁花が多いのはハチなどの滑走路となる場合、上下で10方向から花弁に導けるから(四版花は上下四方向から導けないので種が少ない)とか凄いな、としか言いようがありません(p.152-)。

 動物は大別して素早く動くものと、専守防衛のものに分けられ、運動性指向の脊椎動物は感覚と神経器官を発達させるが、筋肉も発達させるので捕食者からは美味しいエサに見える、という言い方もクリアカット。動かぬサンゴ・フジツボは殻で身を守り、その中間がウニやナマコ、ヒトデだ、と(p.211)。

 海底に立っている棘皮動物のウミユリは、姿勢を保つ靭帯と、捕食者に襲われると本体を腕で覆い隠す筋肉の二刀流で動くそうです。靭帯を硬直させる(キャッチ結合)にはあまりエネルギーを使わないが、こうした二刀流は他の棘皮動物にも受け継がれた、と(p.216)。

 第六章から脊椎動物の属する脊索動物門の話しになるのですが、頭索動物亜門はナメクジウオだし、尾索動物亜門はホヤだもんな…。やんなっちゃいましたよwホヤの幼虫は小型のオタマジャクシそっくりで尻尾を振って泳ぐというのは知りませんでした。

 ヒトがバカをやると「元はサルだから」と思うが、これからは「元はといえばホヤやナメクジだからしょうがない」と思うようにします。

 脊椎動物篇では、魚が上陸した際、地上を這う時に、胸ビレと腹ビレを脚として、それぞれ肩帯と腰帯を発達させた、というのがよくわかります。また、運動性能を良くするために、骨同士で結合させるのではなく、骨と骨をまたぐ筋肉によって結ぶように変化させたというあたりもなるほどな、と。腹ビレは大きな役割を果たしていないので、魚では小さいけど、四肢動物になって、初めて腰骨が目立つようになってきた、と。

 また、これだけ植物が繁栄したのは、葉や種が硬くて消化しにくく、大きな腸を持つ大型動物でなければ、特殊な機能を持つ生き物ぐらいにしか食べられなかったから、というあたりも目ウロコでした(p.294)。

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