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April 08, 2017

四月大歌舞伎の歌種と米吉

Kabukiza_201704

 四月大歌舞伎を見物してきました。席をとったのは昼の部。演目は『醍醐の花見』『伊勢音頭恋寝刃』『一谷嫩軍記 熊谷陣屋』。

 『醍醐の花見』はたわいない新作歌舞伎舞踏。見所は大野治長、治房の兄弟を中村歌昇、種之助の兄弟(歌種)が舞うところ。踊りの旨い歌昇が勇ましく舞うところに、女形で出ることが多い種之助が童髪で加わり眼福でした。女形が立役で出るというのは、宝塚だと男役が手足を出してレオタードのような衣装を着て踊る(ダルマ)みたいな感じウキウキしてしまうのはなぜだろうw日本舞踊は偉そうに語れないけど、決まった姿がいじらしくて堪らない。三月大歌舞伎の中村梅丸に続き、種之助の舞台写真も買うか悩むw

 二つ目の狂言は染五郎の『伊勢音頭恋寝刃』。去年ぐらいに海老蔵が『夏祭浪花鑑』を演ったから、対抗上、夏狂言としてかけたんでしょうか。『夏祭浪花鑑』は文楽を歌舞伎にした狂言だけど、『伊勢音頭恋寝刃』は歌舞伎から人形浄瑠璃になっている。染五郎(高麗屋)は御曹司系では大好きな役者なので大許しというか、こういうちょっと情けないけど、切れると暴れるような刹那的な役は似合う。親父の幸四郎はマジメ一方な感じになってしまったけど、染五郎は若い頃のスキャンダルも含めて、ちょっと脇が甘いところが魅力。

 仲居万野の澤瀉屋さんはうまいねぐらいの印象だが、米吉は痩せて綺麗になったかも。米吉は染五郎がラスベガスのベラージオで「鯉つかみ」演った時に連れて行った女形だけど、相性いいのだろうか。

 高麗屋は、先代の幸四郎が東宝歌舞伎に走ったように、團十郎宗家を頂点とした歌舞伎界の秩序を許せないというか、どのみち自分たちの血じゃないか、という気分があると思う。今の幸四郎もいったんは外に出たし、染五郎はアメリカというかベガスのエンターテインメントと組んでいこうという構想があったりして。

 グローバル展開がまったくできてない松竹は自分たちの価値がわかっていなくて、せっかくの歌舞伎という唯一無二の無形文化財を若冲とか北斉という系統でどうにかするという発想がなくて情けない。新しい展開がないままだと、いま染五郎が幸四郎になったとたんに米国資本と組んで…なんてことになったりして。いまの染五郎はなかなかやると個人的には思っているんで。

 それにしても、高麗屋(染五郎)と成田屋(海老蔵)は相手役の女形を育てたがっているのだろうか。現在の最高の女形は菊之助と七之助だけど、もう自分の劇団持っているし、玉さまは孤高だし。

 戦後の歌舞伎は歌右衛門さまも、玉さまも、ドメスティックな市場しか考えていなくて、その中での生き残りを芸の昇華を通じて達成するというスタンスだと思ったんだけど、染五郎や海老蔵は、グローバル経済の中で自分たちの劇団を生き残らせるか、なんてことを考えていたら凄いんだけど。梅丸、種之助は大好きだけど、本人にそれだけの野望がありそうな感じはしないし、当面、立役主導でいくのかな、と思ってます。

 くだらない作品だと思っている熊谷陣屋で、今日初めて「なるほどな」と思ったのは、染五郎の義経が後光を差す位置にいること。『義経千本桜』でも、義経自身は前面に出ないのに、厳しい人の世に差す後光として象徴的に描かれているという橋本さんの文楽論を思い出す染五郎の義経でした。

 にしても時代物の熊谷陣屋、寺子屋なんかは「なんで、こんなにつまらなくて気持ち悪い作品を21世紀の銀座でかけているのか本当に分からない」としか思えない。単に芝居に飽きた江戸時代の客を驚かすために、自分の子供を殺して主君をたてるみたいな気色悪い物語を、人気のなくなった人形浄瑠璃でやる分には「ある異常な人々の普通の行動」として認識されると思うけど、銀座で人間国宝がやると意味が違ってくるんじゃないかな。幹部俳優が口伝で伝えられたとしても、そんな仁は意味がなく、くだらない。

 世話物では魚屋宗五郎も五月にかけられるけど、これも面白くもなんともない作品。談志が死んだ勘九郎に見てくれと言われて「俺が魚屋なら妹を殺した主君を打つという具合に脚本を変える」と言ってた。

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