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September 17, 2016

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』

Trumbo

 『ローマの休日(Roman Holiday)』は剣闘士を戦わせる見世物を楽しんだことを表す言葉でもありますが、奴隷の叛乱を描く『スパルタカス』の脚本もダルトン・トランボが書きました。トランボは第二次大戦後の希望さえも、奴隷たちの犠牲の上で築かれたということを忘れなかった脚本家です。

 ぼくが初めて彼の名前を知ったのは『ジョニーは戦場へ行った』(Johnny Got His Gun)を「みゆき座」で見た1973年。『ジョニーは戦場へ行った』はこの年のキネマ旬報読者選出洋画ベストワン(ちなみに邦画は『仁義なき戦い』)でした。

 『ジョニーは戦場へ行った』は生真面目すぎて面白くなかったかな…。日本でいえば新日文的といいますか。ルイス・ブニュエルが監督候補だったという話しも聞いたことがあって(当時のキネ旬かな)、それなら少しは面白かったかもしれない、と思っていました。

 でも、パンフレットのトランボの言葉は忘れません。

 当時はまだベトナム戦争が戦われていました。うろ覚えですがトランボは「朝、あなたはテレビのニュースが『昨日のベトナムでのアメリカ軍人の戦死者は〇〇人、民間人の死者は〇〇人、ベトコンの戦死者は〇〇人』と伝えるのを聞く。しかし、あなたは『大変だ!大量殺人が行われている』と血相を変えて外に飛び出すでもなく、朝食を平らげて会社に行くだろう」という書きだしで戦争の悲惨さから目をそらすな、と訴えていました。

 というわけで、当時からダルトン・トランボがどういう人間で、赤狩りにあって大変な思いをしたというのは知っていましたが、下獄までしているとは知りませんでした。

 第2次大戦が終わると1947年にはもう赤狩りが始まり、ハリウッド・テンは議会で侮辱侮辱罪で有罪判決を受け、リベラル派の多かった最高裁に上訴したもの、リベラル派の判事が相次いで死去するという不運で1950年にはトランボも下獄という流れだったんですね。
 
 当時の渋谷は本当に名画座の宝庫で、子どもの頃から観まくっていまたんですが、1943年制作のハンフリ・ボガート主演の傑作『サハラ戦車隊』なんかもまだかかっていたのを覚えています。しかし、脚本のジョン・ハワード・ローソンは、赤狩り以降、まったく映画界からオフリミットにされてしまっています。

 『サハラ戦車隊』はカタルシスとはこれだ!と思った見事なラストを最初に教えてくれたプログラム・ピクチャーでした。

 このように、赤狩りは才能狩りでもあったわけですが、トランボはそれに抵抗します。

 トランボの「共産主義者のファイトと、資本家の狡猾さで戦うんだ」という言葉、素晴らしいと思います(どう戦い、相手をぐうの音も出ないようにするかは見てのお楽しみ)。

 ロバート・リッチ名義で執筆したダルトン・トランボはアカデミー脚本賞を受賞するんですが、笑ったのが『狂熱の孤独』でジャン=ポール・サルトルもノミネートされていたこと。赤狩りしているバカどもは、サルトルの本など読んだことなかったのでしょうw

 以下ネタバレあり。

 三流映画を制作しまくり、結果的にトランボたちを助けるフランク・キングが非米活動委員会(HUAC)の男がトランボたちを雇うのをやめろと迫ると、バットを振り回しながら「俺たちの映画はクズだから、俳優がボイコットすれば素人にやらせる。何を書きたてようが、観客はそんなもん読まない大丈夫だ。しかし、オレの女とカネに影響が出たら殺す」と怒鳴りつけて男を追い払うーンはカッコ良かった。こうした非知性主義は好きです。ちなみにキング兄弟は、モノグラム社(後にアライド・アーティスツ)などで活躍しますが、日本の怪獣映画にも興味を示して『空の大怪獣ラドン』を公開したりします。

 『スパルタカス』をトランボに書かせるカーク・ダグラスが素晴らしくカッコいい役回りなんですが、彼の自伝は『くず屋の息子』。さすがだと思いますよ。『スパルタカス』を主演し『突撃』までつくり、息子たちも厳しく育てた。彼は英雄です。

 非米活動委員会(HUAC)で嫌らしく指揮をとるヘッダ・ホッパーを演じるヘレン・ミレン最高でした。ヘッダ・ホッパーは『サンセット大通り』ではセシル・B・デミルなどと本人役で出ていましたね。ハリウッドに咲いたあだ花でした。

 007パロディの『オースティン・パワーズ』ジェイ・ローチが監督だったんですね。

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