『君の名は。』と清浄度Iの場所
TwitterのTL上で見たという人がどんどん増えている感じが『シン・ゴジラ』と似ていたので、まあ、面白いんだろうな、ということで見てきました。
物語はさておき、日常生活を小津、加藤など日本映画お得意のロー・ポジションで見せ、後半はロー・ポジションから仰角にふるロー・アングルで空を見せていたのが印象的(ロー・ポジションとロー・アングルは違う、なんて議論が大昔、加藤泰監督作品の映画論でやたら語られていたような記憶があるのですが、それを意識的にやっていた印象)。
日本映画お得意のロー・ポジションは狭い部屋の中をいっぺんに効果的に見せてくれるし、そこで生活する人間の日常までも表現してくれるな、と。
あと、ロー・ポジションで閉まる障子が田舎の生活を、閉まる電車のドアが都会の生活を表していたのかな。
印象的だったのは、東京の風景。
四谷、千駄ヶ谷、新宿などの見慣れた風景が、すでに懐かしい。
アニメで描かれた実景が、妙に懐かしいのは、日本の風景が再開発によってつくるそばから壊されていき、移ろいやすいからかもしれません。
あと、10年したら四谷の風景なんかも違ってくるかもしれないし。
アニメにはそれほど詳しくはありませんが、奇しくもオウムサリン事件と阪神大震災があった1995年に公開された大友克洋の『MEMORIES』第2話「最臭兵器」で描かれた甲府市の忠実な描写や、同じく1995年公開の近藤喜文監督の『耳をすませば』の聖蹟桜ヶ丘の風景は、描かれた瞬間に懐かしいというか、もう帰ってこないものとしてあったような気がします。
あと、口噛み酒はセクシー(その理由はContinue reading以下に書きますが、つまらないものは読みたくない、という方はご覧になりませんように…)。
ヒロインがBlow J*bの後のように白い液体を口から出して、考えてみれば形がそっくりな徳利に入れるところとか、「狙ってるな」みたいな。で、二人がカタワレ時に一体化するところはSp*rmaがov*mの中に入っていくように表現されていたように感じます。
人体で乳酸菌しかいない清浄度Iの場所は、乳幼児の胃と膣だそうで、産道通過時にデーダーライン桿菌が口に入るらしい。《だから乳酸菌飲料は少量を局所に入れれば膣は清浄になる。これを会社が宣伝しないのは企業イメージをおもんばかってのことらしい(とは一社員の言である)》(『臨床瑣談』中井久夫、みすず書房、p.51)とのこと。
こうして母親から菌を受け継いで、すくすくと育った若い女性の口内には、健康な細菌集団が存在するとのことで、だから口噛み酒は清浄なんだな、と。
また、洋の東西を問わず、神聖な場所を守る巫女さんは、男性参拝客に、様々なサービスを大昔から提供してきたわけですし、その末裔だからこそ、男性を通じて人々を救える、みたいなことも感じました。
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 『考古学講義』(2019.07.10)
- 『スターウォーズ 最後のジェダイ』(2018.02.03)
- 『サッドヒルを掘り返せ』(2017.11.03)
- 『ハドソン川の奇跡』(2016.10.02)
- 『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』(2016.09.17)
Comments