« 『日本外交の挑戦』 | Main | 禅譲のための『伽羅先代萩』 »

September 10, 2015

『プラトンとの哲学』

Plato_talk

『プラトンとの哲学』納富信留、岩波新書

 プラトンの哲学について、対話篇というプラトンの著作に習い、プラトンと魂の会話をしながら、目指した哲学の方向性、プラトンが当時は語れなかった先のことまでも見つめていこうという良書。
 
 取り上げられている著作は

第1章 生の逆転―『ゴルギアス』
第2章 魂の配慮―『ソクラテスの弁明』
第3章 言葉の中での探求―『パイドン』
行動する哲学者―『第七書簡』
第4章 愛の力―『饗宴』
第5章 理想への変容―『ポリテイア』
第6章 宇宙の想像力―『ティマイオス』
第7章 哲学者とその影―『ソフィスト』

 このうち読むべき古典として真っ先にあげられることの多い、『ポリテイア(国家)』について、2つの思考実験という補助線を引いて、分かりやすく解説してくれているところが印象的。

 たとえ読んだことのある方でも、長大でもってまわった会話に付き合わされる『国家』というと「洞窟の比喩」ぐらいしか思い浮かばないことが多いのではないかと思いますが、ギュゲスの指輪やハデスの兜で身を隠すことを例に、誰も見ていないところでも正しい振る舞いができるかという思考実験と、権力を持つ僭主(テュラノス)の内実が一人の友人も持てない獣の生であることを想像させることで「正義がそれ自体として魂それ自体にとって、もっとも善いものである」ことが確かめられます。

 『プラトンとの哲学』は「魂を配慮せよ」という言葉を通奏低音にしていますが、この第5章と《欠如する者は神ではない、したがって、エロースは神ではない》《愛とはその美そのものへの上昇であり、突如訪れる稀な出会いです。そこで私たちは本物の徳と善さを産出し、永遠に関わっていきます。この「永遠」は子どもを産み自分の像を残していく永遠とはまったく異なります》と『饗宴』を解説してくれている4章だけでも読む価値あるかな。

 私たちのなかには、人間嫌い(ミサントローポス)に陥る者がいる。それは、人とどう付き合うかの技術を持たずに他人を強烈に信頼することから生じる。言論についても同様だとソクラテスは語るなんていうところもいいです(p.81)。

 最後にプラトン『国家』から印象に残っていた言葉を引用して終わります。

「では聞くがよい。私は主張する、〈正しいこと〉とは強い者の利益にほかならないと」

|

« 『日本外交の挑戦』 | Main | 禅譲のための『伽羅先代萩』 »

「書籍・雑誌」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/62254763

Listed below are links to weblogs that reference 『プラトンとの哲学』:

« 『日本外交の挑戦』 | Main | 禅譲のための『伽羅先代萩』 »