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August 24, 2015

『日本外交の挑戦』

Gaikou_tanaka

『日本外交の挑戦』田中均、角川新書

 元外務審議官といいますか、小泉北鮮訪問時のミスターXのカウンターパートナーである田中均さんの新刊を読んでみました。退官10年を期に、戦後70年を迎えた日本外交を整理してくれます。

 巻末に載っている基本文書が憲法九条、日米安保条約第五条および第六条、従軍慰安婦に関する河野談話、戦後50周年の村山談話、小泉北鮮訪問時の日朝平壌宣言、戦後60周年の小泉談話というのは、これは変えられない文章なんだな、ということがわかります。

 右派のニンゲンが無自覚にも期待した戦後70年の安倍談話が河野談話と村山談話を否定することが出来なかったのは、これが日本の「国のかたち」だからでしょうか。同時に安保条約の否定できない事実なわけです。

 ぼくなら、これらに加えてポツダム宣言10条の「我々は、日本を人種差別し、奴隷化するつもりもなければ国を絶滅させるつもりもない。しかし、われわれの捕虜を虐待した者を含めて、全ての戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を行うものとする」も入れたい。しかも、憲法九条の前に。

 日本は70年前に「全ドイツ民の生活、産業、国土を荒廃させるのに必要だった力」をさらに上回る力で滅亡させられたくなかったから、無条件降伏しろという連合軍の宣言を受諾して、原爆二発を含めてメチャクチャやられたにせよ、あれですんだのですから。

 これから、単にポツダム宣言を受け入れうんぬんなんていうのではなく、もっと具体的に潰滅させられたくなかったら、全ての戦争犯罪人に対しては厳重なる処罰を行う裁判権も含めて無条件降伏したんだ、ということを言わなければならないのかな、と。

 とまあ、いろいろ書いたわけですが、内容といえば、日本のエスタブリッシュメントによるクリアカットな外交観が披露されていきます。

 サマライズすれば、日本外交の制約は敗戦が起因。米国との関係で受身とならざるを得ないのは日本だけではない。国際社会の課題を能動的に解決できるのは米国だけ。米国と協力して行動するのは日本、欧州も国益に合致、などなど。

 また、集団的自衛権の問題にしても、そもそも朝鮮半島有事の際には日本の基地から米軍は戦闘行為に出ていくわけですから、そうした際に米軍への戦闘に必要な情報や弾薬などは提供されないとすれば不合理極まりない、という議論にもっていきます(p.110-)。

 このほか、海兵隊は米軍の中でも真っ先に戦闘に出て行く軍であり、死傷率も高いだけに議会への影響力も強い、なんていうあたりも印象的(p.134)。まあ、普天間の問題もこういうのが背景にあるんでしょうね。

 とまあ、いろいろ読んできて思い出すのはこの言葉ですかね。

 《「対米自主」というのは気持ちとしては分かりますけれども、きつい言葉で言えばナンセンスだと思います》『外交証言録 日米安保・沖縄返還・天安門事件』中島敏次郎、井上正也、中島琢磨、服部龍二、岩波書店p.260

 あとは、これまで読んできた、この手の本の中で印象に残ったような言葉を書き連ねて終わります。

 《国際関係の中の国家は虚構であり、国内社会の実態とはつねに大きな隔たりがある。そのはざまに立つ外交担当者はたんに他国と対峙するだけではなく、むしろたえまなく自国の混乱と闘わねばならない》『歴史の真実と政治の正義』山崎正和

 《(日本の)生活の質もかなり高いものになったと感じます。それは日本の国民の大変な努力の賜物だと思います。しかし、日本のこの経済発展は、国際社会の中で成し遂げられたということを日本人は銘記しなければならないと思います》折田正樹『外交証言録』p.264

 《アジアにおけるアメリカの最大の関心事は常に中国だったともいえる。先の大戦だって中国問題に端を発していることからもわかる》『中曽根康弘が語る戦後日本外交』p.222

 日本はいまだアジア唯一のG7メンバーです。中国経済や韓国やASEAN諸国など新興国の経済がこれから厳しくなることが予想されますが、これから意外と主体的な展開が予想されるかもしれません。

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