« 『「孤独」が人を育てる 小池一夫 名言集』 | Main | 『三つの新体制 ファシズム、ナチズム、ニューディール』 »

July 12, 2015

海老蔵の熊谷陣屋

Kabukiza_201507

 7月の歌舞伎座の夜の部は一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)熊谷陣屋と「怪談 牡丹燈籠」。

 熊谷陣屋は熊谷直実を海老蔵が初めて演じるのが見所。自分の子どもの首を後白河法皇の子どもである敦盛の首と偽って落ちのびさせるという、なんともやりきれない話ですが、「制札の見得(せいさつのみえ)」と呼ばれる場面が決まりまくるので、高麗屋とか播磨屋など立役の幹部俳優がやたらかけたがる演目です。

 正直、観客のニーズを無視してるな、と思うのですが、海老蔵が演るのなら話は別。

 幹部俳優が「人間国宝頂戴!」とばかりに演じる熊谷直実(くまがい なおざね)は臭い限りですが、海老蔵だとなんか自分の子どもを殺してきたという設定も現実感がないというか、アニメっぽいというか、舞台全体をハイパー・リアルな空間に変えてしまう。

 よく幹部俳優なんかは、直実の性根をつかんだ演技をなんて平気で言いますが、ハッキリ言って、恩人の子どもを逃がすために自分の子どもの首をはねる人物の性根なんかわかるわけがない。しかも、実際に考えてるいのは「早く人間国宝よこせや」みたいなことなんですから、見物をバカにしている。

 海老蔵はそういった興業システムそのものを含めて批判しているようにも感じます。

 この後、海老蔵は「怪談 牡丹燈籠」で馬子の久蔵を演じます。

 源平時代の武将から一転、江戸時代の馬子になるんですが、海老蔵は海老蔵。

 悪びれるでもなく、玉さまとアドリブを効かした演技で楽しませてくれます。

 それでいいじゃないですか、歌舞伎なんて。

 海老蔵の歌舞伎は歌舞伎じゃない、みたいな言い方を時々見かけますが、先代の幸四郎は確かに素晴らしかったけど、ああした芝居で後50年、歌舞伎は持つのかな?という気がします。

 7月の前は蛇柳を演じても海老蔵だったし、雷神不動北山櫻で五役を早変わりしても海老蔵。でも、いいじゃない。あれだけ華があって色男で口跡が良ければ。

 他に何を求めるんだ、と思います。

 で、見物は正直ですよ。今年に入って閑古鳥が鳴いてた木挽町が久々の満員ですから。

 「牡丹灯籠」で玉さまが海老蔵との掛け合いで「歌舞伎座も世代交代しなきゃならないんだから」と言ってましたが、凄い拍手がわき上がっていましたよ。

|

« 『「孤独」が人を育てる 小池一夫 名言集』 | Main | 『三つの新体制 ファシズム、ナチズム、ニューディール』 »

「文化・芸術」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/61875638

Listed below are links to weblogs that reference 海老蔵の熊谷陣屋:

« 『「孤独」が人を育てる 小池一夫 名言集』 | Main | 『三つの新体制 ファシズム、ナチズム、ニューディール』 »