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June 24, 2015

東宝版『エリザベート』

 東宝版『エリザベート』を帝劇で見物してきました。

 宝塚が初めてウィーン劇場協会のドイツ語ミュージカル『エリザベート』を上演したのは19年前。オリジナルドイツ語バージョンも所々は観ましたが、それに近い形で上演された東宝版(男役を男優が演じる)『エリザベート』は初見。

 小池修一郎先生による宝塚版エリザの最大の潤色はルキーニが語るUn Grande Amoreが、東宝版っつうかオリジナル版ではジョークに近いニュアンスなのに、宝塚では大マジメに「偉大なる愛」として解釈したということなのかな、と思いました。

 オリジナル版は所々見ていただけだったので、演出の小池先生がスミレコード(宝塚的自主規制)に合わせて素晴らしい潤色をしていることがわかって感動。原作者が「お姫様物語にしないように」と注文を付けたとプログラムに書いていたけど、甘々にせず、生々しくもせず、小中学が見てもギリギリOKに良くしたなと潤色に感心しましたよ。

 宝塚版のエリザは毎日でも見られるけど東宝版はキツイ。

 いや、でも、とても良かったですよ!花總まりさまのエリザは美しく、声も張っていたし。おそらく「これが私の最後のエリザベート」だと思って演じていらっしゃるんだと思います。

 ちびっ子ルドルフは松井月杜くんでした。小学校低学年の子が「寂しいんだ」って歌うと、東宝版エリザ全体がスムースに流れるのかな、と感じました。

 以下、ネタバレがあるので注意。


 Act1ではトートが荒っぽくエリザベートをぶん投げたり、フランツ・ヨーゼフが普通にエリザベートにキスしたりするのは、さすが男優が入ると色っぽいところをガンガンやるな、と。

 あと、皇太后ゾフィーが初夜の首尾を確認するためシーツを剥ぎ取るとか怖いな、と思ったんですが、なんつうか、「大人のエリザ」というか「生々しいエリザ」なのかなと思いながら幕間を迎えます。

 そして迎えたACT2。

 衝撃的でした。

 出だしの「キッチュ」からしても、エリザがちゃっかりスイスに秘密口座を持っていたとか、皇太子ルドルフをほったらかしであるなど「まがい物の存在」であることが歌詞の中心でした。

 宝塚版でエリザがフランツ・ヨーゼフに愛想を尽かすのは、商売女を宮廷の寝室に入れた写真をドクター・ゼーブルガーに扮したトートから見せられたからなんですが、東宝版では違うんですね。

 なんと、フランツ・ヨーゼフが商売女からもらった「フランス病」を伝染されたと知らされるからなんすよね。宝塚版ではダイエットに励むエリザが貧血で倒れ、そこに現れたゼーブルガー=トートにヨーゼフの浮気を知らさせ「もう生きていけない。どうしたらいいの!」「死ねばいい」となるんですが、もちろん、東宝版では「死ねばいい」のセリフはなし。

 「死ねばいい」という印象的な台詞も潤色だったんだな、と知りました。

 あと、宝塚版だと民族主義に同情するルドルフは単なるバカっぽい設定ですが、ドイツ主義の盛り上がりと反ユダヤ主義とか描かれていて、ハプスブルグの悲劇だったという感じになってます。

 宝塚版でのハンガリー王国の戴冠は、ルドルフにとってエリザとのエディプス的野望の実現だったのかということも分かりました。そこまでソフィスティケートしている小池先生すごい。もう二度とイケコとは呼びませんw

 オリジナルではどこら辺まで描いているのかは知りませんが、トリックスターのルキーニは生活苦からユダヤ人を迫害するウィーンの民衆を扇動して、最後はヒトラーの恰好となり、天井からハーケンクロイツ旗を垂らします。

 そして、それをルドルフは引きずり下ろして、ハプスブルグ帝国内の各国の独立とドナウ連邦の創設を目指すんですが、ドイツ語オリジナルのミュージカルだとそこら辺を描かないとあかんのかな、と。

 にしても東宝版のルキーニが浮いてこないのは、宝塚版だとひとりだけみすぼらしい衣装だから目立つというのがあるのかな…

 『夜のボート』の歌詞も全然違うのんですよ。

 宝塚版だとフランツには同情できるんですが、オリジナルに近い東宝版だとエリザに病気を伝染すし、息子は無理解故に自殺させるし、『夜のボート』も「愛にも癒やせない事がある」「無理よ 私には」になるのかな、と。

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