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March 04, 2015

『資本論に学ぶ』

Capital_ino

『資本論に学ぶ』宇野弘蔵、ちくま学芸文庫

 少なくとも週2回はリアルの書店廻りをしているのですが、最近のヒットは宇野弘蔵先生の資本論入門書『資本論に学ぶ』が文庫化されていたことを発見したことでしょうか。

 まあ、ピケティ・ブームに重ねてきたんでしょうが、ちくまには元全共闘で資本論とか真面目に読んだ編集がいるんだろうなと感じました。素晴らしい!

 この本は高校生の頃に最初に読みましたが、どこかに埋もれていて探せないので購入しました。内容も人口論が大切だ、みたいなところ以外はほとんど覚えていなかったので。あとは、戦前のドイツのインフレのおかげで『資本論』の原著が安く手に入るようになってようやく読めたみたいなところや、留学先にドイツを選んだのもインフレで安く生活できるから、みたいなところがあったはず…なんてぐらい。そしたらカウツキー版のをやっと買えたというのはいきなりp.13に出てきて懐かしさとともに、一気に読めました。

 宇野先生の御著書は論旨が明確なのと、教条的でないあたりが好感もっていました。《マルクスがもたなかった様な疑問を、われわれはもっているのですから》と『資本論』に関しても聖書のように無謬の書物のように読むべきではなく批判的に読むべきだ、なんてあたり(p.92)。

 有名な三段階論(原理論・発展段階論・現状分析)から資本論は原理論であり、帝国主義論は発展段階のものだが、さらに現状分析も必要だ、みたいなところは柔軟性を感じます。

 原理論では資本過剰(労働力不足)による周期的恐慌発生のメカニズムの解明が強調されます。

 生産能力が上がると、資本に対して人口が相対的に過剰になるような傾向にあるというあたり。それと、商品は封建社会など資本主義社会以前の社会制度を壊していくけど、資本主義社会では資本主義を純化させていくあたりの議論。高校生の頃痺れましたw

 明治維新は世界的に見れば資本主義が発達した段階で起こったので、土地は私有物として山河などは国有とした。イギリスのように初期段階でエンクロージャーによって農民を土地から切り離して工場労働者にしなくても、次男三男が都会に出ていけば事足りた、とかあたりからはじめて(p.120-)、資本過剰(労働力不足)による周期的恐慌発生のメカニズムを強調します。

 "原理的にそれ自身に利子を生む資本、それは具体的に株式相場や土地価格という擬制資本となる。原理的には、それはただイデーとして資本の物神性をなす。貨幣市場では資本の需給で利子率は動きながら決定されるが、株式市場ではその反映を援用する。ここに資本の物神性が完成される"なんてあたりの書きっぷりもカッコ良い。

 純粋の資本主義社会では、利潤の得られる投資を利子で満足する資本家はいない。だから、サラリーマンが株を買っても、原理的な資本家にはなれない、となんてあたりはこの年にならないと実感として湧きません。他人の資本を集めて自分の資本のように利用する方がずっと有利だ、と(p.224)。

 また、宇野弘蔵先生が繰り返し語っているのは、法然上人か大蔵経を読んで南無阿弥陀を発見したように、資本論をよんで発見したのは、当たり前だけど、労働力の商品化だ、というあたり。

 1959年に発表された富山小太郎さんという物理学者の測定についての論文に触れて、宇野先生自身、よくわかんねと言ってるので確かめようもないけど、ここは不確定性の事を言ってるんじゃないかと思いました。となると、近経の数学の怪しさは、データそのものへの過信じゃないかな、なんていう近経批判につながると考えるのは宇野先生への過信かw

 河上肇が『社会問題研究』を出して資本論を教えていた終わりの頃、福本和夫が日本に帰ってきて価値形態論を一生懸命やったとか、神話的な時代だわな…(p.128-)。

 見田宗介先生の父であり、甘粕大尉の従兄弟でもあった見田石介が宇野先生の『経済原論』をソ連アカデミーの『経済学教科書』と同列において云々あたりの著述は、高校生の頃にはまったく分からなかったろうな…再読ってのもいいもんだ…と感じました。

 いただけなかったのは白井聡の解説。実は『永続敗戦論』は途中で投げ出したんですが、本の解説で、マル経のイロハさえ大学で知られなくなったことで一般人の知的レベルが低下したのは、富裕層への累進課税提言が画期的であるがごとき注目を集めるピケティブームを見てもわかるとくさしていたのに大笑い。だいたい、『資本論に学ぶ』がちくま学芸文庫に入れられたのは、ピケティのブームがあったからじゃない。なんでもかんでも批判して現実をみないってのは、こういうことだわな、と。

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