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February 25, 2015

『植物が出現し、気候を変えた』

Emeraldplanet

『植物が出現し、気候を変えた』デイヴィッド・ビアリング (著)、西田佐知子(訳)、みすず書房

 前に『松井教授の東大駒場講義録』を読んでいて、「地球の生物圏はあとどれぐらい存続できるのか?」というストレートすぎる問題の解答が面白かった。答えは5億年。地球は地表の温度を一定に保つため、二酸化炭素を減らしてきたが、5億年後には大気中の二酸化炭素は今の10分の1ぐらいに減り、それでは光合成生物が生きられないので、生物圏はなくなる、と。

 だいたい植物が光合成で酸素をせっせとつくり始めてからはじめて地球には生物圏ができあがりますが、最初の酸素発生型光合成生物であるシノバクテリアの最古の化石は27億年前だそうです(地球上で最も古い堆積岩は38億年前)。そして10億年以上かけて酸素を大量に生産して、それまで生きていた大部分の嫌気性バクテリアを地球の一部においやり、酸素によって生きる大型生物の発生を加速させたという、進化の主役のようなバクテリアなんですが、『植物が出現し、気候を変えた』では《植物を、自然界に影響を与える地学的要因の1つ》(謝辞)として考えられるようになったとしています。

 生物大絶滅も恐竜を死滅させた巨大隕石衝突のような例もありますが、他の生物大絶滅の例では《植物の進化や分布拡大が地球の大気構成や天候をダイナミックに変え》たことによる超温室状態やスノーボールアース化などが原因となっているとのこと(訳者あとがき)

 例えば、地球のほとんどが氷結したスノーボールアースは、植物が分布を広げて二酸化炭素を奪いまくり、温室効果が急激に低下したから発生したとか…結局、植物の存続も危うくなって大気から奪われる二酸化炭素の量が減って気候も安定した、と(p.47-)。

 60cmを超える巨大トンボが出現したような石炭紀は酸素濃度が上昇していましたが、それは皮膚呼吸で原始的なエラと肺の組み合わせで呼吸していた陸に上がったばかりの両生類や節足動物にとっても助けになった、と。酸素が濃ければ、二酸化炭素を楽に取り除けるから(p.72)。

 ちなみに、化石燃料などのいまのような酸素消費を続けたとしても、酸素不足の危機が起こるには7万年以上かかるだろう、と。一方、化石燃料はあと千年ほどしかもたないといわれている、と(p.63)。

 地球のアキレス腱はオゾン層だというのも、なるほどな、と。オゾン層がシベリア・トラップによって破壊された後は、紫外線Bの増大で、植物の突然変異が大量に発生したとか。

 3章ではレイリー散乱のレイリー卿の息子さんがオゾン層を発見する話しとか、NASAがビッグデータを処理しきれない間にイギリスの探検隊がオゾンホールをたまたま見つけたとか、意外と新しい話しなんだな、と感動しながら読んでました。

 生物と気候システムの複雑なフィードバック網はまだ完全に解明されたわけではありませんが、ますます植物=生物圏という認識を高めることができました。

 『生命40億年全史』リチャード・フォーティ、『生命 最初の30億年』アンドルー・H・ノールなども感動しましたが、研究の進みっぷりに感動しました。

目次

第1章 葉、遺伝子、そして温室効果ガス
第2章 酸素と巨大生物の「失われた世界」
第3章 オゾン層大規模破壊はあったのか?
第4章 地球温暖化が恐竜時代を招く
第5章 南極に広がる繁栄の森
第6章 失楽園
第7章 自然が起こした緑の革命
第8章 おぼろげに映る鏡を通して

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