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December 21, 2014

『球団と喧嘩してクビになった野球選手』

Nakanowatari2

『球団と喧嘩してクビになった野球選手』中野渡進、双葉文庫

 なんにも考える必要のない本を読みたいと思っていたときに、本の雑誌が選ぶ14年度文庫本第1位ということで本屋さんで購入した本。

 面白かった。

 一言でいえば、毒舌で20世紀後半から21世紀の高校野球、社会人野球、プロ野球を切りまくったという感じの本でしょうか。例えば森祇晶監督については黄金時代の西武という誰が監督をやっても勝てるチームで優勝を重ねたと切り捨てていますが、まあ、そうだな、と。

 ぼくの世代は夏は少年野球、冬は少年サッカーをやっていました。でも、圧倒的に人気なのは野球で、物心ついてからずっと高校野球やプロ野球のテレビ中継で解説者からきめ細かな戦術を聞かされて育ったんですから、その頂点たるプロ野球選手が2度もWBCの覇者となるわけです。まあ、普通に生活していればイヤでも野球に詳しくなるわけで、巨人から横浜に行った仁志敏久に関して「暗いし性格はキツイ」(p.65)とか平気で書いちゃうあたりは凄いと思うし、斉藤隆についても「こんなに気持ちが弱くてよく第一線でやってきたなと逆に感心する」(p.37)となるほどと思わせてくれます。

 中野渡進投手に関しては甲子園の出場もないし、実働3年でフル稼働したのは実質1年ということで記憶は薄いのですが、「Number」誌上での連載企画が面白いな」とは感じていました。

 「君の投げている姿は昔の野球を観ているようだ」という本人が50代の男性からもらったファンレターがあとがきで紹介されていますが、スピードの遅い分は気合いと長身からの角度あるボールで打ち取るみたいなピッチャーでしたね。

 2年目に中継ぎで63試合に登板して肘を壊して残り2年は鳴かず飛ばずで戦力外通告されて引退、その後、現役時代に培った食への追求心から飲食の道に進み、「もつ鍋わたり」を成功させるも、突如閉店。現在はものづくりの道にどうやら進むらしいという波瀾万丈の人生を送っています。

 プロ野球選手の暴露本といえば、元横浜高校出身の愛甲の本も面白いのですが、中野渡も小平市出身ながら三菱自動車川崎からベイスターズと横浜色が強い選手で、なんかあるんですかね。お二人とも横須賀の要素が入っているかな、みたいな。

 キャッチャーついても「目指すべきは、世間に受ける〝繁盛店〟ではなく、その人にとっての〝名店〟つまり古田さんじゃなくて、谷繁さんだ」とサラッとすごい評価を下してしまう。谷繁は江の川高校から見ていたけど、正直、こんなに凄い選手だとは思わなかった。そこらあたりが野球を見る目のなさなのかもしれませんが、来年、野村の3017試合という出場記録を抜いて、「歴代キャッチャーNo.1」を確定させて監督業に専念したら、落合とのコンビで中日はまた怖いチームになるんだろうな、と思います。

 夏場の遠征中。中継ぎで酷使された中野渡と木塚を食事に連れ出し「テメェら、夏は体力つけなきゃならねぇからな。俺と同じ量だけ食うまでは、酒は飲ませねぇぞ」と食わせる場面には感動しました(p.109)。初勝利したらエルメスのリュックをポーンと買ってくれたそうです。谷繁やるな。

 にしても、やっぱり食事は大切ですわ。中野渡は子ども時代からプロ野球選手を目指して父親と二人三脚で特訓を重ねたんですが、毎日、牛乳2リットルがノルマだったそうです。高校時代は監督に見込まれて毎日焼肉10皿、玉子は1パックという食生活。これによって192cmの身長を得たそうです。

 好きな言葉は《足りない部分は気合いで補う。それは野球も同じだ》。こう見えても、好きな言葉は「根性」ですので、共感しちゃうな(p.117)。

 《商売なんて気を抜けば、あっという間に落とし穴にハメられちまう》《商売をやるなら本当に信用ができる人間としか組んではダメだ》《他人に任せても毎日、伝票抜かれて「今日は客が来ませんでした」って言われりゃ、あっという間に破産》なんてあたりも、どんな世界でも応用できる言葉でしょう(p.207)。

 金属バット使いまくり時代の社会人野球について「凄まじいスイングから放たれる弾丸のような打球は、投手が直撃を喰らって病院送りにされる本物の凶器だった」というのは、商売柄、時々、社会人野球に付き合わされていたんで、ああ、そうだったな、と(p.167)。

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