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July 19, 2014

『タカラジェンヌの身体になりたい』

Amachaki

『タカラジェンヌの身体になりたい』天咲千華、祥伝社

 井筒親方(現役時代のしこ名は逆鉾=さかほこ)の娘さんによる体験的ジェンヌ論を読みました。

 いろいろ宝塚に関する本を読みあさっていて、ほとんどは自分の胸にしまい込んでいるんですが(『ベルサイユのばら』も含めて…)、どうしても「この言葉にならない感情をぶつけたい!」と感じるものがあるものだけはチラッと書せてもらいますw

 『タカラジェンヌの身体になりたい』の著者である天咲千華(あまさき・ちはな、愛称はあまちゃき)さんは井筒親方の娘。馬の血統では、雌馬は父の母に似るなんてよく言われますが(逆に雄馬は母の父に似ると言われるから、母馬が大切なんです)、井筒親方は弟の寺尾が美男子だっただけに、お母さんが綺麗だったのかも。

 それはさておき、子どもの頃から《お相撲さんと食卓をともにして、彼らが食べろ食べろと言われている横で育った》あまちゃきは、どうしても丸々とした顔になってしまったそうです。その反動で、中学生の頃には、ドライフルーツ入りの薄いシリアルバー1日1枚だけで過ごすという極端なダイエットで1ヵ月で13kg減量したとか。当然、続かないわけで、宝塚音楽学校に入ってからもダイエットとリバウンドを繰り返す日々を送ります。

 お稽古中は、あたえられたお衣装を綺麗に着なければならないということでほとんど食べず、熱いお風呂に入って汗を流すなど「ちょっとキレてるな」みたいなまでにダイエットにのめり込み、それが終わるとストレスでお菓子を食べて太って…みたいなくり返し。

 特に堪えたのが匿名の「太っている」という手紙だそうで…。

 タカラヅカニュースの舞台稽古などを見ても、娘役さんたちは異常に痩せていて、腰を持ってのリフトなんかを見ても30cm台じゃないかな…と思うような人もいるので、薄々感じてはいたものの「娘役さんたちは、こんな日々を送っていたのか」と驚きました。

 いろんな人が書いているんですが、長期計画でトップまでの道が示される男役に対して、使い捨て感の強い娘役の運命は過酷です。バウホール、新人公演でヒロインに抜擢されても、より主演路線での期待値が高い後輩が台頭すれば、あっという間に「その他大勢」の仲間入りをしてしまう。そしてほとんどの娘役が10年もたたないうちに退団していきます。

 退団後もテレビなどで活躍できるのは黒木瞳、檀れい、紺野まひるさまなどトップ娘役の中でもほんの一握り。なんで娘役さんたちは、こんな短い舞台人生に満足しながら大階段を降りることが出来るんだろうと思っていたんですが、ひょっとして…と思っていたのが「これで辛いダイエットから解放される」という思いからなんじゃないのかな、と。

Amachaki2

 酷いな…と思うのが、匿名の手紙。

 まずは合格したことに対する誹謗から始まるっていうんですから、業の深い世界です。入団後も組替えに際しても「相撲界のコネを使ってトップを狙うのは恥ずかしくないのか」という中傷(実際には途中で退団)、さらには「グーで殴られたような顔だ」「太っている」「脚が短い」などの容姿に関する指摘。

 クラクラしました。

 こんな手紙にショックを受け、公演に向けて刹那的なダイエットに突入し、声が出なくなるからステロイドを処方してもらいって切り抜けるという日々。

 さらに地方都市を1ヵ所2~3公演ずつで駆け抜ける全国ツアーに最下級生として配属されると、《貴重品を集めることや、お衣装のアクセサリー類を全員分分配すること、上級生の方々の早変わりのお手伝いや舞台への誘導。移動の際には一行を案内したり交通機関での席順を考えたり》などの雑用を一手に引き受けなければならず、《初日は慌ただしく過ぎて開演30分前までスッピン》だったとか。

 最近、いろんな世界でメンタルトレーナーを付けるが流行って、スポーツ選手なんかよく結婚しちゃったりしますが、こんな悩みを抱えていて、相談できる人もいなかったら、そりゃ、そういう人に頼るだろーなー…と思います(羨ましいw)。

 あとは、組替えも馴れている居場所を奪われるという感じがして、本人にはショックなんだ、というのが初めて切実に分かりました。

 雪組で今秋トップとなる早霧せいな(ちぎちゃん)はあまちゃきと同期なんですが、一緒に宙組から組替えが決まって《当日はいっしょに泣いていました》というあたりはジーンとしてしまいました。ちぎちゃん、歌がいまいちなのですが、ちゃんと応援してあげよう。せっかくえりたんが盛り上げてくれた雪組なんだから、大劇場にも遠征いってあげなくては…。

 そして今秋、トップ娘役から降りて退団する蘭乃はなさん(らんちゃん)もあまちゃきと同期なんですが、らんちゃんは《ザ・宝塚の娘役》という感じで、当時から悔しさを感じる次元は超えていたそうです。でも、そうした彼女からトップ娘役としてのお披露目公演が終わった後《怪我することもなく毎公演終えられたこと。彼女に同期のみんなのお陰と言ってもらえて、私たちも「やった!」という感じでした》というあたりは感涙が…。

 らんちゃんは、前の公演の『ラスト・タイクーン』で体調を崩しているのが客席からもわかって、声が全然出ていないしアラベスクも決まらずに、スカートが足首から落ちてきたりしていたんですよ。

 それを見て「あーあ」と思ったりしたんですが、サヨナラ公演となる次の『エリザベート』では、ちゃんと応援してあげなくては…と思いました。

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