『一夢庵風流記 前田慶次』
雪組トップスター壮一帆さんのサヨナラ公演となっている『一夢庵風流記 前田慶次』を宝塚大劇場で見物してきました。
事前に原作の隆慶一郎『一夢庵風流記』を読みましたが、なかなか面白かったですよ。《九品蓮台に至らんと思ふ欲心なければ、八萬地獄に落つべき罪もなし。生きるまでいきたならば、死ぬるでもあらうかとおもふ》という本人の言葉もカッコ良いし。
ただ長いんで、どう1時間半に収めるのかな、と思ったら、思い切ってはしょっていましたね。ただ、徳川家康をあんなにフィーチャーしなくても…という感じはうけましたかね。
前田慶次は安土桃山時代だからこそ輝けていたんであって、次期トップスターの早霧せいなさんが演じた奥村助右衛門の存在が薄いといいますか。出奔した前田利家の妻まつとの悲恋を中心に描いて、後半を省いた方がスッキリするんじゃないかと思いましたが、それでは登場人物が限られてきますか…。大湖せしるさんが演じる加奈の役割も、あれだけ出番が限られていては、原作読んでなければ混乱するんじゃ…まあ、宝塚ファンは、みんな原作読んで予習してると言われてますからいいのかな…。
美少年の剣士、庄司甚内を演じた月城かなとさんは、直江兼続役の鳳翔大さんと共に良い役もらったという感じ。
コメディ・リリーフの深草重太夫役をつとめる夢乃聖夏さんもいいアクセント。美味しいところ持ってってるというか、雪組にともみんがいることで、舞台が随分、救われていると思います。できれば歌ってほしかった(言ってはいけないことなんでしょうが、音程を外しまくりの次期トップの銀橋ソロの代わりに入れるとか…)。
ショーでは、サヨナラソングがちょっとあざといというか、感動の押しつけ気味の歌詞なのが残念。
踊りも全体に地味っつうか…。まあ、それが雪組の持ち味なんでしょうか。
ただ、ホセ・フェリシアーノが元歌を唄った『ケ・セラ』はよかったな…。一緒に退団する娘役トップの愛加あゆさんとのデュエット・ダンスという演出もよかった。
こっちの歌の方で周りの観客はクスンクスンしていました。
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