文楽『女殺油地獄』『鳴響安宅新関』
住大夫さんの引退興行ということですが、まあ、フツーに東京の国立劇場に文楽が来たら、聴きに行くというスタンスで今回も。
聴いたのは第2部の『女殺油地獄』と『鳴響安宅新関』。
『女殺』は今の仁左衛門さんと染五郎ので馴染んでいるというか文楽では初めて。
実録モノということで、江戸時代の油問屋の株仲間からの圧力で興業は一回限りとなったといわれています(『冥途の飛脚』のもう一人の主役である八兵衛は堂島の米問屋の株仲間でしたが、米と油の株仲間は大きな力を持ち、業界として行政にも圧力かけられる存在だったみたい)。
坪内逍遙などによる近松再評価の中で、明治42年(1909年)に歌舞伎で上演され大当たりをとって、文楽では戦後の昭和27年(1952年)に素浄瑠璃として新しく作曲され、人形も入れての復活上演は昭和57年(1982年)という不思議な上演記録を持つ作品。
「豊島屋油店の段」を咲大夫さんで聴けたのはよかったかな、と。
『鳴響安宅新関』も似たような経緯を持つというか、なんで文楽でやるんだろ、という作品ですが、まだ文楽が人気を保っていた明治時代に、『勧進帳』を手軽に人形浄瑠璃で観たいというニーズがあったのかもしれません。
もちろん、能の『安宅』、歌舞伎の『勧進帳』、文楽の『鳴響安宅新関』の順です。
富樫の役を千歳大夫さんで聴けたのはよかったかな、と。
『女殺油地獄』ではツルツルすべるシーン、『鳴響安宅新関』では弁慶が六法を踏むというか見得を切るシーンでの足役が大変だったのかな、みたいな。
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