« 『ラスト・タイクーン』とアーヴィング・タルバーグ | Main | 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 »

April 21, 2014

『心中・恋の大和路』と増村版『曽根崎心中』

Shinju_yamatogi

 宝塚の雪組公演『心中・恋の大和路』を見物してきました。

 トップスター、壮一帆(そう・かずほ)さんの退団前のラス前公演ということで、チケットは自力では手に入りませんでしたが、友人から融通していただき、前から七列目という望外な良席で見物できたのは、本当に嬉しかった。感謝です。

 でね、良かったですよ。

 ロックな歌をバックにした近松モノといったら増村保造監督で梶芽衣子と宇崎竜童が「おはつ・徳兵衛」を演じた『曽根崎心中』(1978)を思い出します(音楽は宇崎竜童)。宝塚が近松の人形浄瑠璃『冥途の飛脚』を元にした『心中・恋の大和路』を初演したのは1979年ですから、流行ものには素早く反応する劇団の良さが出たというか、まあ素直に重ねていったんでしょう。当時は近松ものの再評価がまだ続いていた感じですかね。

 ぼくは宝塚の『心中・恋の大和路』を見物したのは初めてでしたが、今回は初演に帰ることがテーマとのこと。初演のテーマはまったくわかりもしませんが、ぼくが印象に残ったことからいえば、それは傾城のキラキラした目、一途に心中へと男をいざなっていく目じゃないかと思います。

 増村監督の『曽根崎心中』は、もう物語のかなり始めの方から梶芽衣子さん演じる「おはつ」が、潤んだキラキラした目で徳兵衛に「死のう」といいよります。

 狂言も違うし、歌舞伎版も文楽版も『冥途の飛脚』は、花魁の方がそんなに積極的に死のう死のうみたいにもっていくわけではないんですが、宝塚版は目のウルウル感が梶芽衣子さん的で、否応なしに忠兵衛と道行きに向かう、みたいな。

 見つめ合うシーンの瞳は役者同士にしか見えませんが、その真剣さ客席にもジワとして伝わっていくんじゃないでしょうか。

 良家の子女タイプの愛加あゆさんが梅川を演じているんですが、目をキラキラさせて浄瑠璃でいえば「なぜに命が惜しいぞ、二人死ぬれば本望、今とても易いこと」と口説くところはちょっとゾッとしました。

 壮一帆は、『Shall we Dance?』でもそうだけど、女性に翻弄される男を演じさせるといいな、と。歌舞伎でも文楽でも、忠兵衛が三百両を持って梅川のいる新町へウロウロ行ってしまうあたりを丁寧にやるですが、宝塚版はアッサリ。その方が、ハズミで禁制をやぶってしまう忠兵衛のダメさ加減が際立っていいんじゃないかな、みたいな。

 二人のからむシーンの美しさは歌舞伎や文楽にはないものでした。近松が生きていたら、絶対にこの舞台を観たかったと思います。

 あと、もうひとりの主人公ともいうべき八右衛門は未涼亜希(みすず・あき)さん。歌舞伎の八右衛門は悪人ですが、宝塚版は原作に近い友人思いの善人。役柄の善悪の違いはありますが、八右衛門としての貫禄は例えば板東三津五郎さん並みでした。最後の歌なんか、圧巻すぎ。

 主演以外でよかったのは禿(かむろ)の有沙瞳さん。第2部ではソロで歌っていたけど、次の公演でもチェック!みたいな。

 できたら禿にはちゃんと三味線を弾いて欲しかったかな。それぐらいの芸は見せて欲しかった。

 それと、あの花魁の着るあの裲襠(うちかけ)はちょっとチープ。歩くとふわふわと踊らないと…。

 和物も衣装タイアップして、いいの使いましょうよ…。「その他花魁」とか長襦袢着ているのかと思ったほどだったのは残念。

|

« 『ラスト・タイクーン』とアーヴィング・タルバーグ | Main | 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 »

「文化・芸術」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/23829/59506788

Listed below are links to weblogs that reference 『心中・恋の大和路』と増村版『曽根崎心中』:

« 『ラスト・タイクーン』とアーヴィング・タルバーグ | Main | 『いちえふ 福島第一原子力発電所労働記』 »