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April 15, 2014

『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか』

Otokoyaku

『なぜ宝塚歌劇の男役はカッコイイのか 観客を魅了する「男役」はこうして創られる』中本千晶、東京堂出版

 中本千晶さんのヅカ本4冊目。今回は100年の歴史とともに振り返る宝塚の男役と日本の女性の変遷みたいなものがテーマでしょうか。

 読み応えがあったのが第5章『「夢の王子様」から「夢をかなえた女子」へ』。

 ベルばらがブームになって、しばらく阪急のお荷物といわれていた宝塚が再浮上した1970年代には、まだキャリア・ウーマンは珍しがられていた時代だった、というんですね。1974年の労働力調査によると20~24歳では65・9%が働いていたものの、25~29歳では44.4%へと一気にさがり「20代に結婚して仕事をやめ、家庭に専念する」女性が多数派だったことがわかります。

 これが2010年になると、20~24歳では69.4%が、25~29歳では77.1%となり、子育ての影響はあるものの、その後の年代も7割近くが就労している状況となり《観客のうち30~50代の女性が75%を占めるという。今やタカラヅカは、仕事や家庭に疲れたアラフォー女性の癒やしの場になった》といいます。

 こうしたことを背景にベルばら以前のスターたちは、まだ退団すると「結婚するのが当たり前」だったようですが、いまの時代、80人の組子を率いるという大役をこなした後に対談するトップスターは、組織のマネジメント能力も要求され、退団後も仕事を続けるなど「キャリア形成」を意識した生き方をしています。

 そしていまのタカラジェンヌたちは舞台だけでなくテレビ、雑誌、写真集、DVDやCDといったメディアミックスでバックステージを晒しつつ、新しい可能性を探しているように思えます。

 にしても、改めて阪急電鉄というバックがあったからこそ、タカラヅカは100年を迎えられたんだと感じます。あとがきで《本来は営利を追求すべき私企業が、あまり儲けにはつながらない舞台興業を、愚直なまでに淡々と続けてこられたことには頭が下がる。もしかしたらそれは、雨の日も風の日も、ダイヤどおりに安全に列車を運行し続けることが最重要である鉄道会社だからできたことなのかもしれない》というのはなるほどな、と。

 筆者は東大を卒業したあとリクルートに就職しますが《リクルートのように、利益率重視で、しも短期間で結果を出すことを求める会社が劇団を所有したとしたら、「利益目標達成せず」ということで、あっという間に廃止の憂き目に遭うことだろう》といったあたりも含めて。

 ダンスの花組、華やかなアイドル系スターを生む月組、日本物の雪組、新しいぶんスケールの大きいスターを生む星組などの組カラーの話しも納得的。

 100年の歴史を重ねたことで、タカラヅカの男役は、歌舞伎の女形と同じような日本の伝統文化となりつつあるという指摘も「なるほどなぁ」と思いますが(p.50)、同時に昔はプリマドンナだった娘役が「寄り添う」型へと変わっていったというのは少し寂しいかもしれません。また、今のようにトップスター(男役)と娘役トップがコンビとして常設化されたのは、90年代以降の比較的新しいことなんだな、というのは意外でした(p.172-)。

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