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April 07, 2014

『悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東』

Akuno_shuse
『悪の出世学 ヒトラー・スターリン・毛沢東』中川右介、幻冬舎新書

 中川右介さんお得意の資料を駆使した人物中心の歴史書。学術書とは違うので読みやすいし、コンパクトにまとまってあるのに、意外と知られていない(と個人的に思った)事実がちりばめられていて「そういうことだったのか…」と納得感あふれる読後の満足が得られます。

 勉強不足は今さら恥ずかしくないので書きますが、毛沢東は江青に籠絡され、長征での疲労からモスクワで療養している妻・賀子珍と離婚の上、4人目の妻に迎えると宣言したのですね(ちなみに、賀子珍も2番目の妻・楊開慧の存命中に娶っている)。その時、毛沢東は朱徳や周恩来から野望の塊であった江青を《結婚後二十年間は党務と政務に関与させないという誓約》をさせられていたんです。その後、江青は約束は守りましたが、時期が来たら毛沢東に女性関係を黙認するのと引き替えに政治活動を認めさせ、文化大革命による大混乱をもたらしました。

 この本はスターリン、ヒトラー、毛沢東に関して書かれていますが、旧ソ連と第三帝国は消滅しているため完全否定できますが、中華人民共和国は今なお世界の大国として存在しているため、毛沢東は完全否定できないどころか、紙幣にまで印刷されあまねく行き渡っています。世界から毛沢東主義とイスラム原理主義がなくなったら、どれだけ平和になるかと思うことがあるのですが、まあ、嘆息するしかないですね。

 そうは言っても「農村が都市を包囲する」「鉄砲から政権が生まれる」「帝国主義は張子の虎である」などのスローガンをつくった毛沢東は《革命家・政治家の中では、毛沢東は最高のコピライターだった》というあたりことは抑えています。まあ、凶悪な詩人ですよね、毛沢東は。

 あと、スターリンとヒトラーは当局のスパイだった可能性も高いな、と改めて思えてきます。まあ、二重スパイの可能性もあるんですが、スターリンは銀行強盗事件でも、逮捕を免れています(売春宿を経営して上納していたのは知りませんでしたが…p.41-)。ここらあたりも含めてスターリン篇は秀逸。

 また、ヒトラーはナチスの前身であるドイツ労働者党(名前は左翼っぽいけど右翼政党)の集会に潜入しますが、あまりにも演説がうまかったために、逆スカウトされて党首になってしまうという過去をもっています。様子をさぐるために密偵として集会に参加したのは1919年9月12日ですが、もう16日には入党しているという節操のなさ(その後、半年間は国防軍で給与を得ていますp.78-)。

 ナチス前身のドイツ労働者党を指導したトゥーレ協会・ゲルマン騎士団のつくった右翼政党にドイツ社会主義党という政党があって労働者層が支持母体だったそうですが、そこと合同話しが持ち上がるとヒトラーは拒否します。それはナチスは中産階級が支持層だったから。ここは重要なポイントだと思いました(p.83)。意外と、中産階級が右翼っぽくなるんですよね…。トロツキーがファシズムとは、没落するかもしれないという恐怖感に駆られた中産階級の運動だ、と書いていたことを思い出します。ナチスは政権に近づくにつれて、社会主義的な考え方の人物をさらに切り捨てて、最後には、最右翼の突撃隊も粛正していくのですが、それはナチスが意外と中産階級と最後には資産家たちからの支援を得ていたからかな、と。

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