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March 25, 2014

『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』

Tachibana_300

『読書脳 ぼくの深読み300冊の記録』立花隆、文藝春秋

 立花隆さんの4冊目となる書評集。

 どれも、本数冊分の情報量があって、本当は全部、読まなければならないのだけれど、読書量の落ち込みとともに立花さんの書評だけで読んだ気にならせてもらっていることが年々、多くなってきています。文系、理系でも大学院に入ったならば、立花さんの書評集を春休み中に読破することで、専門外の大きな知識の地平が開けると思います。

 基本的には雑誌の連載をまとめた本なので、毎回、オマケがついているのですが、今回も石田英敬東大図書館副館長との対談が読ませてくれます。この対談でなにが驚いたかって、石田さんが立花さんの内ゲバを扱った作品の中に出ていることを、本人が告白していること。下宿が対立するセクトから狙われていることに気づいた石田氏が友人たちに引越を手伝いに来てもらっているところを襲撃され、本人は逃げおおせたものの2人が殺され、本人は日本に居られなくなってパリに留学するなんていう話しから入ります。

 陰惨としかいいようのない話しですが、6年間にわたる読書日記の最後は若松孝二監督の連合赤軍事件を扱った映画に関する本。立花さんは「連合赤軍事件がなかったら今も革命運動が燃えさかっていただろうか?」という鈴木邦男さんの特別寄稿を引いています。《この程度の『仲間殺し』は歴史上いくらでもあった。輝かしい明治維新の前夜は、長州、土佐、水戸藩などで『仲間殺し』が日常的だった》という鈴木邦男さん言葉はある意味、衝撃的。確かに連赤や内ゲバは運動の退潮を早めたかもしれませんが、やはり内実が伴っていなかったというあたりの本当の「総括」が必要なのかもしれないと思いました(改めてそんことをするする必要もないぐらいかもしれませんが)。

 以下、面白かったところを箇条書きで。

 モンゴル軍は恐怖を宣伝して、相手の戦意を喪失させていたが、それが黄禍恐怖症につながった、と(『パックス・モンゴリカ』)。

 村山治『特捜検察vs.金融権力』は購入。バブル崩壊でオモテの金融システムと地下世界の癒着と腐敗があばかれたが、その根底にあったのは大蔵省の護送船団体制。それを検察が暴くと、検察の調査活動費の不正を大蔵が暴くというハブ対マングースのような闘いがあった、と。

 神童が健全な精神発達を遂げられず、やがては重度な躁鬱になってしまったという『情報時代の見えないヒーロー』がサイバネティクスの創始者ノーバート・ウィーナー。

 『「石油の呪縛」と人類』はオイルの事が全てわかる良書ということで、もし必要になったら新書だし読もうかな、と。

 ぼくは吉本さんと同じように江藤淳を評価するんですが『占領史録』(講談社学術文庫1~3)がまだ品切れとは…。8月15日からマッカーサーが厚木飛行場に降り立つ30日までの間だけで日米両政府でやりとりされた50通の文書、書翰、声明があるとか。

 バナール『黒いアテナ』藤原書店は読んでいたけど、原著第1巻が『ブラック・アテナ』として新評社から出されたいたので、いつか買おうかなと。

 『人類の足跡10万年全史』スティーヴン・オッペンハイマーは購入。アダムもイブもチンバンジーとあまり変わらない脳容積しかもっていなかったのに、それが拡大していったワケを読みたくて。

 イラク戦争を始めたキッカケをつくった移動式の大量破壊兵器製造トレーラの情報はドイツに亡命してきた化学工学エンジニアによってもたらされたんですが、このコード・ネーム『カーブ・ボール』(ボブ・ドローギン著)は精神に異常をきたし、それとともに信頼性に疑問が高まったんですが、アラビア語~ドイツ語~英語への翻訳過程で「問題あり」の部分が吹き飛び、開戦の口実を探していたチェイニーが飛びついたというのは知らなかったな…。

 細胞内外の水の流出入が細胞膜の「アクアポリン」(水の穴)を通して行われているとがわかったのは20年ぐらい前のことで、『水とアクアポリンの生物学』は日本で行われた学会でのまとめだそうです。

 『超大陸 100億年の地球史』によると04年のインド洋大地震と津波はプレートの「ゴンドワナ接合部(ジャンクション)」と呼ばれる部分で起こったんですか…。

 スーザン・ジョージ『アメリカは、キリスト教原理主義・新保守主義に、いかに乗っ取られたのか?』によると、ブッシュが勝てたのは、右派思想による論壇コントロールが静かに進んできた結果とのことですが、日本も論壇右翼のサンケイを始め、JR東海などが出している雑誌などを通して、右派論壇にカネが廻っていることが、ネットの右傾化を呼んでいるのかもしれません。

 『アレン・ダレス』は在スイスの日本人外交官を通して日本の終戦工作を行っていて、切腹した阿南大将に昭和天皇が「阿南よ。余には(アメリカが天皇制を保証するという)確信がある」と言い切って聖断を下した理由がそこにある、と。

 『伊藤博文 近代日本を創った男』によると、彼が頭角を表すのは岩倉使節団に参加してからで、英語で交渉ができ、大量の書物を買って知識を獲得したという語学の達人だったというのは知らなかったな…。

 敗戦国は戦勝国を高く評価しすぎるのですが『ソ連から見た日露戦争』ロストーノフによると、バルチック艦隊を世界一周させて送るという作戦自体が「のるかそるかの勝負」(レーニン)であり、財政も破綻状態の中で行われた作戦だったというところまでは知らなかったな…。

 『どうして子供は勉強しないといけないの』によると、ある領域の勉強をしないと、それを学ぶために大脳に準備された軸策や樹状突起が細くなって、遂には消えてしまうといいます。新生児の脳の重さは350グラムですが、3歳で900グラム、8歳で1100グラムという急激に発展する過程が一番大切だそうです。破綻国家などで子供が勉強する機会を失われるというのは本当に深刻な問題なのかも…。つか義務教育が発展していった国が急激に国力が増す理由はこれかな…。「人工内耳から分かったその理由」というのが副題で、聴覚が知のベースになっているとのこと。

 『モスクワ攻防戦 20世紀を決した史上最大の戦闘』は購入。スターリンの圧政に苦しんだ住民からは解放軍ともみなされたドイツ軍はあっという間にモスクワに迫りますが、冬将軍の訪れと同時に、日本軍に備えていた完全冬武装の極東軍がシベリア鉄道で運ばれて一気に形勢逆転というのが流れ。ヒトラーは日本による挟み撃ちを望んでいたでしょうね…。ノモンハンで叩かれていたこともあったんでしょうが、日本はソ連を恐れていました。第一次大戦の青島作戦といい、この時に南方へ進出して米国の参戦を招いたことといい、ドイツが親日的という考え方は歴史的にみればあり得ないと思うんですよねw

 川上宗薫の義妹である川上郁子さんが書いた『牧師の涙』長崎文献社という本があるのは知りませんでした。川上宗薫の母親と妹2人は長崎原爆の直撃を受け、焼け跡から白骨化した姿で発見した父は牧師を辞めたというんです。官能作家・川上宗薫は純文学作品『夏の末』などが良いとは聞いていましたが、こうした背景を持っていたとは…。

 『137 物理学者パウリの錬金術・数秘術・ユング心理学をめぐる生涯』はいつか読みたい。

 『毛沢東 ある人生』は華国峰が4人組を一挙に逮捕して権力を掌握していく場面だけは読んでみたい。

 世界は第2米ロ新冷戦関係の中で動いている『プーチン最後の聖戦』は面白そう。闘っているのはFRBっつうかドル体制だというのは、なんつうか最近のウクライナを見てもわかる感じが…。

 『通貨戦争』によるとFRBはQE2以降、量的緩和策をつかって海外でインフレを生み出すことでドルの立場を強めることを狙っていますが、中国は人民元をドルペッグとしているので年率5%のインフレが生じ、中国はドルペッグを維持すればインフレが進行し、人民元を切り上げれば労働コスト上昇で外資が流出するというジレンマに陥ります。最近、中国人民銀行が人民元と米ドルを交換する為替レートの1日の変動幅を、これまでの上下1%から2倍に広げると発表したばかり。これは人民元をできるだけ切り上げずにインフレを抑えるという狙いなんでしょうね。

 ヨルダン人小児科医の『三重スパイ』による自爆テロで、CIA職員15人が死傷する事件っていうのがあったんですね…。『ゼロ・ダーク・サーティ』を観たくなりました。

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