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December 06, 2013

『日本の立ち位置を考える』

Nihon_no_tachi_ichi

『日本の立ち位置を考える』明石康編、岩波書店

 加藤陽子先生の講演、対談が抜群に面白い。ちょっと意訳して内容をお伝えしますと…。

 チャーチルはルーズヴェルトに「第二次大戦はドイツが裏をかいくぐって軍備を増強していたのを見逃さなければ防止することが容易だった無益な戦争」と語ったが、現在、アメリカは海軍力を中心とした中国の軍拡を見過ごしたという反省にたって、2020年までに艦艇の6割をアジア太平洋地域に集中させるとともに、160ヵ国が批准していた国連海洋法条約にも参加することを目指している、と。いまのところ、共和党の反対で条約を批准するところまでいってはいませんが、こうした国際的な法の支配の力も借りて、中国が太平洋へと進出する際にも苦言を呈することができるようにする、と。

 アメリカと日本は「国の安全保障を守るために」「我々の大義は正当」であり、軍事行動は相手国に「平和をもたらす」ものだから、異議をとなえるものは「愛国心が欠落している」とみなされるという共通の傾向も持つ。真珠湾も愚かな攻撃だったが、イラク戦争などもとんでもない不合理な決定だった。

 しかし、かつて日米が激突したアジア太平洋地域という場所と、単独行動をとりがちなアメリカという国家それ自体が、中国にある種の行動をとらせる環境となりうる。この場合、日本は中国の行動を促している国家としての感情を想像できないと死活的な問題になる。

 例えば日本が戦前、傷ついたのはパリ講和会議だった。戦勝国の権利として、中国を中心としたアジアにおけるドイツ権益をいっさい日本に引き渡すべきだという主張が、中国側の「中国もドイツに宣戦布告している。その時点でドイツ権益は中国のものとなっているので日本に引き渡される理由はない」という主張に負けそうになったから。

 米英仏の首脳は中国に分があると判断し、クレマンソーは旧知の西園寺全権に法理論で戦うのは不利だというアドバイスを送り、結局、日本は主張が認められなければ対独講和条約に調印しないと脅しをかけ、ロイドジョージが中国を説得したことで落着するというきわどい勝負になった。

 ウィルソンは英国のバルフォア外相に対して日本は難しい国で「条約の解釈についてたいへん巧妙な説明をする」と評価したが、日本は面目を失ったと感じた、と。

 リットン調査団の内容も、有利な解決策が示されていたにもかかわらず、満鉄不振の原因が張学良による並行鉄道にあるという主張が「並行線建設は禁止されていない」と指摘された衝撃によって、内容を冷静に吟味することなく拒否することにつながってしまった、と。

 日本は世界秩序を構成する唯一の力を持ってきたアメリカに合わせて自らの交渉の言葉を紡いできたタフネゴシエーターだったが、日露戦争の正当な対価として得た諸権利にも、実のところグレーゾーンがたくさんあり、力関係でどうにでも解釈されることに衝撃を受けた、と。

 日本も中国に対しては、相手は匪賊だとして討つとしていたが、やがて国際共同体の中の内乱というアメリカの論理にやられた、と。

 また、トラウトマン工作による日中和平を蹴ったのは早期和平を怪しんだ昭和天皇で、こうした決定を下した天皇と側近に対して軍部は「愚かな決断をした」と認識し、信頼関係が崩れたと判断した、と。

 近著『現代中国の父 トウ小平』でもアジアの経済社会を分析しているエズラ・f・ヴォーゲルさんの報告と対談も読ませてくれました。

 曰く、アメリカは二度とヒトラーと日本の軍国主義者による侵略を許してしまった孤立主義はとらない、と。しかし、国民が享受するような快適な生活水準を維持する民主主義国を作り出すための行動に出たアメリカは、生活様式を押しつけるという占領観も生まれた、と。

 中国人が最も日本人と密接に接したのは侵略してきた日本兵だったのに対して、アメリカ人が接したのは軍国主義を捨てて平和の道筋を追求しようとした日本人だった。

 ロバート・ケネディは早大での講演会でひどいヤジを浴びたが、大声でヤジを飛ばしていた学生に壇上へ上がって意見を述べるように促した。マイクも切られたケネディは最後に拡声器で「公開討論は大歓迎だ、それこそが民主主義的なやり方だ」と言って、強烈な印象を与えた。

 ワシントンやニューヨークでは、日本は好感を持たれているが、日本と一緒に仕事をしようという忍耐力は低下している。

 中国が敵にならないように中国の理解を得つつ、安保協力を継続していくことが日米の利益。

 もはや単独行動が難しくなったアメリカは、国際的な法の支配を強化するため、長い間、署名してこなかった国連海洋法条約の批准に向けて動き出している、と(共和党の反対でまだみたいですが)。

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