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December 25, 2013

『角栄のお庭番 朝賀昭』

Kakuei_oniwaban

『角栄のお庭番 朝賀昭』中澤雄大、講談社

 田中角栄元首相(首相の在任期間は1972~74)が死去して今月16日でちょうど20年。いまだ「『角栄』本」の出版は盛んです。

 今の政治家には求めようとしても得られない清濁併せのむような度量、圧倒的な大衆性、言ったことは必ずやる実行力が毀誉褒貶の激しかった現役時代から時を経て、覆棺論定されたということでしょうか。越山会の女王だった佐藤昭さんの娘さんか書いた『昭 田中角栄と生きた女』では、田中首相の辞任のキッカケをつくった「田中金脈研究」の立花隆さんも《だんだん年を取り、日本の戦後の歴史が一目で見渡せるような年齢になってきて改めて考えると、あの人はやっぱりなかなかの人だったなあ、という気がしますね》と語っています(p.250)。

 この『昭 田中角栄と生きた女』では密葬ですませた佐藤昭さんの葬式に一人駆けつけた小沢一郎民主党幹事長(当時)が亡きがらを前に「ママ、長い間お世話になったね」と小さく呟いたという場面が印象に残りましたが(p.214)、このエピソードを著者の中澤雄大毎日新聞記者に伝えたのが、本書の語り部である朝賀昭元田中角栄秘書。日比谷高校から中央大学法学部を経て、そのままストレートに秘書となり、これまで沈黙を守ってきた人です。どうして沈黙を破ったかというと、妹のように可愛がっていた佐藤昭と田中角栄の娘である敦子さんが『昭 田中角栄と生きた女』で不倶戴天の敵である立花隆さんと接近したのがどうしようもなくイヤだったということなんでしょうか。そして、石原慎太郎や立花隆などが描く角栄像のエピソードの問題点を明らかにしておきたかった、というのがモチーフなんでしょう。

 でも、やはり、印象に残るのは「食って、寝て、嫌なことは忘れろ」など角栄さんの人柄をあらわすような言葉ですね。

 《大蔵大臣時代、省内の清掃係の人たちに「やっ、ご苦労さん」と慰労の一声を欠かさなかった。「大臣に直接声を掛けてられたのは初めて!」と喜ぶ声が後から伝わってきた》(p.36)なんていうあたりも明るくていいし、「政治にはカネがかかる。世の中きれいごとを言っているだけでは済まない。池田や佐藤にしても危ない橋を渡ったものだ。彼らは、大学同窓の財界の連中がバックにいる。みんな身内のようなものだ。高等小学校出の俺にあるのは、県人会だけだ」(p.137)、「天のとき地の利をみないで永住の地は得難いものだ」(p.75)なんていう言葉も印象に残ります。「モナリザにしてもパンダにしても、オヤジさんは人心をつかむのが上手だった」という感想もなるほどな、と。

 そして佐藤ママ+朝賀昭、麓+早坂に分かれていた田中事務所の内部紛争や、角栄さんが倒れた後の裏話なども興味深い。

 しかし、よく自殺しなかったと思いますよ。角栄さんは。金権問題で日本中から袋だたきに合っている中で妊娠中の田中眞紀子さんは、目白の自宅の二階から飛び降りると脅すし、佐藤昭さんの娘さんの敦子さんは実際に飛び降り自殺を試みて奇跡的に助かったり…公私ともメチャクチャでしたもんね。『熱情 田中角栄をとりこにした芸者』の辻和子さんのような存在があったから、かろうじて自分を保てたのかもしれません。ロッキード事件で保釈された後、真っ先に帰ってきたのは辻さんの家じゃなかったのかな…。さすがに目白には一回、帰っているか…個人的にも本妻を立て、公の席には一生出ず、二人の息子さんを育て上げた辻さんの人柄が好きですし、知合いのお偉いさんも「辻さんはいい人だった」と語っていたのを覚えています。

 ロッキード事件に関しては《戦時中に米国による石油禁輸で苦しめられたことを忘れたことはなかった。「石油の一滴は血の一滴である。エネルギー資源は無駄にできない」》と独自の資源外交を展開したことがアメリカに睨まれた原因だった、としています。

 でも、結局、後継者を育てられなかった、というのが朝賀さん総括のような気もします。それと、世界が変わってしまっていた中で、もし倒れずに健在でいても、できることがどんどん少なくってきていたんじゃないか、とは感じましたが…。

 とにかく、心底、議員に惚れ込んだ秘書さんが書いた本でした。

 角さんのゴルフセットがケネス・スミスだというのは初めて知りました。もちろん、現物を見たことは、当時もありませんでしたが、ゴルフクラブのロールスといわれていたことは知ってました。それにしても、やっぱりああいった高いクラブを振っていたんだな、とw

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