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October 31, 2013

『人の気持ちがわかる脳 利己性・利他性の脳科学』

Hito_no_kimochi

『人の気持ちがわかる脳 利己性・利他性の脳科学』村井俊哉、ちくま新書

 知人からの勧めでナシア・ガミーの"A First-Rate Madness"を寝る前の良い睡眠薬代わりに読んでいるんですが、とても面白いので、ガミーの翻訳で気になっていた村井俊哉さんの本も読んでみました。

 最後通牒ゲームで10ドルを分け合う決定権を持つ人間から「5ドルずつ分け合おう」と言われれば、受動的な方は納得するんですが、だんだん金額を決める方が多く取り出すと、受動的な方は不公平感にさいなまれて拒否し始めます。受動的な方が拒否すると双方ともおカネをもらえなくなるんですが、考えてみれば、1ドルにしてもただでもらえるわけで、合理的な判断ではありません。ゲームで「君には2ドルしか上げないよ。私は8ドルもらうけど」と言われて、受動的な方はカッとなるんですが、「2ドルでも貰えれば、ゼロよりはいい」と冷静な声を響かせるのが腹内側前頭葉皮質。ここを損傷する怒りを抑えられなくなるというんです。

 こうしたゲームで相手の取り分が多いことに腹を立てて2ドルをタダで得る機会を逸するような人間は、実は自己犠牲を払ってでも共同体を守ろうという意識がある、というのにはハッとしました。不公平な提案をするようなメンバーがボロ儲けをして、他の共同体メンバーが不公平な分配にあずからぬようにするという利他的懲罰派の心情を持っているというんですね。ぼくはタダなら貰っておく派だから不思議に思ったんですど、今の世の中でいえばネトウヨや古くさい左翼的な主張に扇動されちゃうような人は、脳の島皮質前部の活動が活発すぎて、不公正感に耐えられないんだろうかとも思いました。現実の世界でも合理的判断をどっかに吹き飛ばして頑張っちゃう人が多いというか、実際のところ世の中、こんなんばっかりですからね。

 本にも取り上げられていますが、日韓ワールドカップの共催が決まった時に、協会の中には「もうアタマに来たから、共催なら降りよう」という人もいたそうですが、釜本が「現役の頃、ワールドカップは16ヵ国しか出られなかった。参加国が32ヵ国に拡大され、日本でもその半分の16ヵ国が割り当てられるんだから、いいじゃないか」と言ったのが受入れの決め手になったと言われていますが、あの人はなかなか冷静だったな、と感じたエピソードも思い出します。

 ぼくはけっしてそうではないにせよ、「金持ち喧嘩せず」という姿勢は大切にしています。そして、不公平感にカーッとくる島皮質の活動は、「耐え難きを耐え忍ぶ」腹内側前頭皮質が抑えてるのかもしれないというんですね。そして利他的懲罰を加えようとする傾向を加減する係数にはセロトニンに関係しているんだそうです。

 セロトニンといえばご存じSSRI。SSRI大好きなアメリカのビシネスエリートは「自信満々、柔軟、仕事が速く、エネルギーがあって、社交的」な雰囲気を大切にしているんですが、こうした人々はハイテク資本主義に適しただけでなく、長い目でも成功するような性格なのかも。

 個人的にも、すぐにカッとくるように人間には「カネの臭いがしない」な、と感じています。

 交換は貨幣を、贈与は評判を媒介にして行われ、交換と報酬という二つの原理は、脳にとっての「報酬」の共通通貨である線条体の活動という点でひとつになるというあたりも鋭い。そして他者の痛みや苦しみなどになんの共感も示さず、自分の利益だけを最大にしようとするこの精神病質の人びとの行動は、前の章で取り上げた「係数β」の病ということができるなんてありたも。

 最後通帳ゲームで不公平な提案を受入れられないのを高α、低くても受入れられるのを低αとすると、人間は低α低β型(自分が与える立場にあるときも、与えられる立場にあるときも感情に左右されないクールなタイプ)、低α高β型(与えられる立場にあると不公正な要求をするパートナーにも怒らず、与える立場になったら惜しみなく与える天使のようなタイプだが行動力がない)、高α低β(与えられる立場にあるときは正当な利益を要求するが、持てる立場に立ったときは困っている人をみても平然としているタイプ。低βが際立てば精神病質、高αが際立てばクレーマー)、高α高β(自分が持てるときは分かち与えるが、同じことを他人にも要求する熱血タイプ)に分類しているあたりは「なるほどな、いるいる」と思いながら読んでいました。

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