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October 06, 2013

義経千本桜と三大狂言のテーマ

Yoshitsune1000

 芸術祭十月大歌舞伎は新開場した歌舞伎座初の三大義太夫狂言の通しとなる『義経千本桜』。

 義経=千本桜であり、偉大なる善としての義経の光があまねく世を照らし、歴史をも変えていくという橋本治さんの『浄瑠璃を読もう』を読んでからは初めての『義経千本桜』でもありました。

 見物したのは仁左衛門さんがいがみの権太を演じる午後の部。「木の実、小金吾討死」「すし屋」「川連法眼館」と続きます。

 ドナルド・キーンさんの『日本文学史 近世篇二』を読みながら歌舞伎座に行ったのですが、三代狂言のうち菅原伝授は、三つの親子の別れ、忠臣蔵は三つの切腹の場面で構成され、それぞれが竹田出雲、三好秋洛、並木千柳という三人の合作者の腕の見せ所になっているというんです(p.216-)。

 義経千本桜へのキーンさんの言及は少なかったんですが、橋本さんも書いているように、ひょっとして親を想う子の心がテーマなんじゃないかな、と思いながら見物していました。

 「渡海屋」「大物浦」では安徳天皇の、「木の実、小金吾討死」「すし屋」ではいがみの権太の、「川連法眼館」では鼓を追いかけてきた源九郎狐の、親を想う気持ちがテーマなのかな、と。

 だから、文楽では、まだ五段目はあるけれど、義経が源九郎狐に初音の鼓を下げ渡す四段目のところを「大詰」とした歌舞伎のやり方というのは、よくテーマを捉えているのかもしれません。

 これはよく印本を読まないといけないのかもしれませんが、フォーマットを決めて(忠臣蔵、菅原、義経)、テーマを設定して(切腹、親子の別れ、親を想う子の気持ち)、三人が競い合って作り上げた段が三代狂言でも面白いのかもしれません。

Keane

『日本文学史 - 近世篇二』ドナルド・キーン、徳岡孝夫訳、中公文庫

 それにしても、キーン先生の『日本文学史 近世篇二』は面白かった。忠臣蔵は1794年には中国語の口語訳が出版されていたというのは知りませんでした。また、《敵討ちは、武士にとってはきわめて重い義務だったが、同時にそれは武士だけに許された特権でもあった》p.222というのは、なるほどな、と。だから忠臣蔵の七段目で足軽出身の平右衛門があれほどまでにして討ち入りに参加したいと願うのは、武士であるというアイデンティティの問題なんだな、と感じました。

 にしても、キーン先生の《今日なお文楽は、政府の庇護下に博物館的な生命を永らえている》というのは、キツイな…(p.237)。

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